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こいつはいきなりとんでもないことを言いおったな。死ぬまでに解消できる未練にしろとは、やっぱこいつは詐欺師ではないのか?
いや、そもそもあいつらに嫌われたのもわしの身から出た錆ではないか、それを今更仲直りしたいというのが未練というのは少しおこがましいかもしれん。
そうすると、わしの未練、わしの未練、……とりあえず話してみるか、どうせ先の長くない命じゃ。
「じゃあ、この話をしよう。わしの、その初恋の人が、いまどうしているかは分かるか、名前は住田れんという、あ、もしかしたら結婚して苗字が変わってるかもしれんし、わしと同い年じゃからとっくに死んどるかもしれんが」
わしがそう言うとメモ帳をアンジは取り出し、確認をしておった。
「ううん、住田れん様、83歳ですか、あいにく私の担当にそのような方はいませんね」
「そうすると、どうすればいいんじゃ」
「古橋様、それならば、これからその住田様と過ごされた場所へ私と共に参りませんか?」
「しかし、もう最後に会って70年は経っておるぞ、大丈夫なのか?」
わしの問いに、アンジは冷静に答えおった。
「それがあなたの未練なのでしょう、ならば行きましょう」
「しかし、今から出たところでわしの死期に間に合うのか?」
「なあに、ようは現在どうなったかを確認したいだけでしょう、それならば先程のお願いよりよほど叶えやすいです」
アンジはそう言ってわしの家から出て、どこからともなく携帯電話が出てきてタクシーを呼んだ。
あれよあれよという内にわしとアンジはタクシーに乗って、東京駅へと着いた。
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