老人の故郷へ

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老人の故郷へ

 そして先程見せたマジックでわしの千円札を万札に変え、それを旅の資金として使う為に、わしの故郷群馬までの新幹線代に変えよった。  心配になり新幹線内でわしはアンジに尋ねた。 「しかし、大丈夫かの?」 「ご安心を、往復してもお釣りが来ますので、それに万札でちょっとした買い物をしてまた千円札を増やせば、逆にお金は増えますよ」 「それがまずくないのかと聞いとるんじゃ、わし犯罪者にならんかの」 「なあに、死神の力は証明できませんし、あなたはご自身の未練を解消することを考えれば大丈夫です」  そう言ってからアンジが今度はわしに尋ねた。 「その住野様は一体どういうお方で?」 「れんはわしと同じ小学校に通っておった。田舎生まれにしては妙にきらびやかで、今考えるとわしの一目ぼれじゃ」 「それで?」 「まあ、他の奴らも一緒じゃったが一緒に遊んだりして楽しかったわい」  更にアンジは疑問を覚え、わしに尋ねた。 「告白はしなかったのですか?」 「できるわけないじゃろ、れんは地元の有力者の娘、わしは貧乏な家の子供、交際すら許されん空気じゃった」  少しアンジが黙るとわしはその後の事を話した。 「結局わしは中学を卒業して田舎を出て働きに出たんじゃ、そこから1度も会っておらんし、今生きてるかどうかも分からん」 「とりあえず、まずは生死の確認ですね」
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