老人の故郷へ

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 インターホンをおすと中年女性が出てきた、わしとは親子ほどの年齢差と思われる。 「ええと、どちら様でしょうか?」 「ああ、申し訳ない、わしは古橋源三と言いまして、住野れんさんを訪ねてきたのですが……」 「住野……れん……、ああ、母の旧姓。はい、私の母です」 「娘さんでしたか、あの、それでれんさんは?」  次の瞬間、申し訳なさそうな顔でれんの娘と言う女性は話しだした。 「遠くからわざわざおこしいただき申し訳ないのですが、母は10年程前に亡くなりました」  その事は予想できたはずじゃった。じゃがどこかわしはショックを受けてた。そんなわしの心中を知ってか知らずか、アンジはこの娘に声をかける。 「そうでしたか、こちらの古橋様に頼まれ、お連れしたのですが」 「あの、あなたは?」 「申し遅れました、私は安治丈、古橋様の身元引受人をしております」 「そうなんですか、あの古橋さんはどうして母を?」  わしが答えに窮していると勝手にアンジが答えおった。 「実は初恋の人に会いたいというお願いをされましてね、それで私がお連れしたんですよ」 「初恋……あ、もしかしてゲンちゃんって呼ばれていたりしませんでした?」  突如、娘は昔わしがれんから呼ばれていた呼び方をわしに尋ね、わしはそれに反応した。 「はい、そうですが」 「やっぱり、いえ、実は母が生前にといっても、父が亡くなってからなんですけど私に話してくれました。昔好きだった人がいたんだけど、自分が地元の有力者の娘で好きって事を言いにくかったって」 「え?」 「結局1度も会うことなく父と結婚したんですが、父の死後、会いたがっていたんですが、段々と体が弱っていって、そのまま……」
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