ループ・ザ・館

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―――これはどういうことだ・・・? ―――やっぱり夢なのか? 突っ立っていると大貴が来て尚斗の背中を叩く。 その衝撃に何となく憶えがあった。 「何をしてんだよ! 早く入ろうぜ!」 「あ、あぁ・・・」 「あ、強く叩き過ぎた。 悪い。 にしてもこの館、鍵がかかっていなくてよかったよなー」 そう言って大貴は中へと入っていく。 尚斗は混乱した頭を整理しようと必死だった。 ―――・・・どういうことだ? ―――俺は今の光景を憶えている。 ―――何だこれ、デジャブ? ―――沙里が死んだと思っていたのは俺の勘違いだった・・・? ―――いやでも、あんなに生々しいのは確かに・・・。 脳裏にこびり付いた映像は確かに沙里の死を意味していた。 だが実際に目に映るのは沙里が館の内部を観察している姿。 「止めよう。 沙里が生きていたことはいいことなんだ。 死んだことにする必要はないんだ」 不思議に思いながらも、二人の後に続き館を見て回った。 先程の時のような罪悪感は感じない。 「あ! ここキッチンじゃない?」 「あ、見てよ! 豪華なお風呂もあるじゃん!」  館内は夢で見ていた通りの構図で目新しいものは特になかった。 ―――初めて来た場所なのに、全て身に覚えがあるとか凄く違和感・・・。 ―――でもこれが現実なんだよな? ―――沙里が死んだのは夢だった。 ―――それでよかったじゃないか、安心した。 とはいえあれを完全に夢だったと思う気にはなれなかった。 もしかしたら予知夢というヤツなのかもしれない。 それならば館からすぐに離れるべきだが、危険という確証はないし外へ出たところで安全とは言い難い。 ガソリンがなければ本当に遭難してしまう。 ―――・・・でも万が一ということもあるよな。 ―――絶対にないとは思うけど、もしあの夢が予知夢だったら沙里が死ぬことになる。 ―――・・・沙里を避難させておくに越したことはないか。 そして寝る直前になった。 不安に思った尚斗は二人に提案した。 「あのさ。 寝るのは一緒の部屋で寝ないか?」 「えー? どうして一緒?」 沙里は明らかに嫌がっている。 「いや、ほら。 ここは知らない人の館なんだ。 みんなまとまっていた方が、家主が現れた時に事情を説明しやすいと思うし」  そう言っても沙里は嫌そうだった。 仲のいい友達とはいえ、彼氏でもない異性二人と寝るのは抵抗があるのかもしれない。 ―――それでも今は沙里の安全が第一だから。 尚斗は頭の中から館の地図を引っ張り出す。 厳密には部屋ではないが適していた場所があったのだ。 「大広間とかで寝よう! 三人は離れて寝るから大丈夫さ」 「それならまぁ、いいけど・・・」 そう言うと沙里は渋々了承してくれた。 「大貴もいいよな?」 「まぁ・・・」 不思議がる大貴からも了承を得て大広間へ向かう。 「じゃあ、私はここで寝るー! 月明かりが入ってくるし少し安心するから」 「分かった」 沙里は大きな時計台の下で寝ることにしたようだ。 無理を言って一緒に寝ることになったため、ここは沙里の要望を聞いてあげた。 ―――月明りのおかげで沙里の様子も見やすいし、いいか。 「じゃあ、俺たちは端で寝るか」  尚斗と大貴は両サイドの壁に沿って就寝することにした。 「おやすみ」 電気に近い尚斗が明かりを消す。 そしてぐっすり眠っていた時のことだった。 突然大きな揺れで目を覚ますことになる。 正確に言うなら時計の鐘の音が聞こえた一瞬後に大きく揺れた。 どうやら地震のようで、震度にして4以上ありそうである。 「何だッ!? 地震か!?」 だが目覚めた時には既に遅かった。 「沙里!!」 「ッ!」 大貴の叫び声が聞こえ急いで明かりをつけてはみたが、既に沙里は時計台の下敷きになっていた。 重厚な時計はかなりの重量がありそうで、倒れた下からは放射状に赤い液体が飛び散っている。 ―――・・・は? 偶然にしても運が悪過ぎる。 倒れていたのは時計台だけで、他のものは一切動いていない。 いや実際は揺れはしたのだろうが、倒れるようなものが時計くらいしかなかったのだ。 「何をやってんだ! 尚斗も手伝え!!」 「あ、あぁ・・・」 ―――どういうことだ・・・? よく分からない今の状況。 頭で整理ができていないまま協力して重たい時計台をどかした。 「沙里ッ・・・!」 急いで容態を確認するも沙里は既に事切れていた。
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