日常

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ああ腹減った。待ちに待ってた昼休み。つかの間の休憩である。 「海ー!!食堂いこー!限定のプリンがあるんだって「行く。」 「おおう食いぎみ。」 瑠衣が言っていた通り今日の食堂では限定のプリンが食べられる。 庶民が中々手に入れることが出来ない代物なのでめちゃくちゃ楽しみにしてた。 本当に特待生で良かった。タダ喰いサイコー。 そして食堂で甘味が待っているんだからもう一人誘っとかないと。 「あれ、阿久津は?」 「阿久津くん居ないね〜、さっきまで珍しくサボんないで教室に居るなって思ったのにー」 「それはそう、でも居ないんなら仕方ねーな。俺らだけで行こ。」 「アイサ〜」 ここの食堂はやはり個性的だ。 煌びやかな装飾が施された扉、高い天井、二階建て。 そして、何と言っても... 「行くよ、海。」「ん。」 「「キャアアアーーー!!!瑠衣様だああああああ!!!」」 「きょ、今日はなんていい日なんだ、かかか海崎様が「しっ静かにしな。お黙りなさい。「ご、ごめん。」 「やっぱ瑠衣って人気だよなぁー。」それに怖気ないのもすごいが。 俺が特待生だったのが珍しかったからなのか「「海崎様ああああ」」 って叫ばれた頃も最初にはあったが、俺が叫ばれる対象になるとか微塵も考えていなかったし、それ以上に耐性が無さすぎて毎度の事ビビり散らしていた。 普通に考えて、あんな名も知らない大勢の人に名前を叫ばれるのははっきり言ってホラー。 ただ、最近は特待生が物珍しくなくなったのか叫ばれるのはなくなったからすごくありがたい。   「海も人気なのに…」 「いや、特待生が珍しいだけだろ。」 というか人気になるなら男子よりも女子の方が良かった… え〜、とどこか納得していない瑠衣。 何が言おうとしたものの口を閉ざす。 海が歓声をあげられた当初、驚きすぎて咄嗟に瑠衣に後ろから抱きつき、そのまま背中に隠れようとしたのは瑠衣の記憶に新しい。二人とも似たような背丈だったので、もちろん成功したとは言えなかったが。   普段ポーカーフェイスで何にもあまり動じていないイメージがある海だからこそ、あの仕草は不意打ちであった。 というかあれは全食堂が萌えた、と瑠衣は確信していた。 更に、この学校は人気のある生徒に親衛隊という、いわばファンクラブが付く。 彼らはいい意味でも悪い意味でも親衛対象が第一である。 海にはまだ親衛隊ができていないが、できるのも時間の問題ではないかと踏んでいる。 その海のファンたちが、海が瑠衣に抱きついたことで、歓声をあげられるのが嫌で迷惑だ、と海にとっては良い方向で解釈したのである。 そんな感じの何とも言えない経緯があるって海に説明しても絶対納得してくれないよねぇ… あの子、自分がどんな目で見られているかわかってないんだしー。 と、心で呟きながら瑠衣は海を見遣るのだった。
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