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瑠衣と食堂でお昼を終え、あと二時間の授業も乗り切った。
阿久津はいつの間に戻ってきたのか、最後の一限だけを受けていた。
そして最後に陸のテキトーなSHRを聞き流し、遂に放課後になった。
ちなみに放課後は体験入部だが、帰宅部まっしぐらの俺はそのまま寮に帰る。
「海〜、バイバーイ。」
「ああ。瑠衣、また明日な。サッカー楽しめよ。」
ああ。これで帰れる。
その考えが間違いだったと後にすぐに思い知らされることになったが。
この東郷坂学園の春の風物詩。又の名を一年生にとっての洗礼。
その時、学園は戦場と化し、それを作り上げるのは、言わずもがな上級生、そして、三年生の陰謀で直接戦場に駆り出されるのが二年生。
彼らに必要なものは優秀な跡取り。全ては彼らの拠り所を守るため。
そんな彼らの戦いも今日までで一時休戦。
今日がラストスパートである。
「行くぞ。」
漏れ出た声。彼にとっては誤算だった。
だが、その一言は、周りにいた戦士たちの気持ちを雄弁に代弁していた。
漏れ出た一声で高まる士気。
いざ、戦場へ。
「マママ漫画研究部にど、どうか入って下さいぃぃー!!た、体験も、だダダ大歓迎です!」
「そーだそーだ!漫研に入ればぁー!あんな漫画もぉー!こんな漫画もぉー!
読みほぉだいー!青春はぁー、漫研の漫画にありっあベシっ!」
「こんな部活よりも、水泳部に入れば?歓迎する。」
「そーだそーだ!水泳部に入ればぁー!あんなマッチョもぉー!こんなマッチョもぉー!見ほぉだいー!青春はぁー、水泳部の背筋にありっあベシっ!」
「黙れ兼部幽霊。」
「え、え水泳部にもい、行ってなかったの?」
「取り敢えず、見学だけでも良いから今日は水泳部にしないか??」
今日で体験期間が終わり、明日で部登録だから勧誘に会うのは当たり前だ。
それを見越して、今日こそは阿久津と一緒に帰るぞ、と謎に意気込んでいた。
だが、悲しいかな物事はうまく行かない。
ガンを飛ばして上級生をどかして道を開け、阿久津はさっさと寮に帰ってしまった。勿論ついて行こうとした。というか、ついて行った。だが阿久津が通った瞬間すぐに道は塞がれてしまった。
無慈悲だ…
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