日常

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そうして、2階分降りて、早く寮に帰るべく廊下を歩く。 前方から少々派手に制服を着崩した背の高い4人組がこっちに歩いてくる。 やたらとキラキラというか、陽キャオーラが半端じゃない。どちらかと言うとあんま関わりたくない人種だなぁとか、思いながらすれ違った。 ガシッ! 「え」 そしたら一番でっかい人が腕を掴んで来た。 「みぃつけた」 ひい。あんた誰なん。 最初に思ったのはこれ。みぃつけたってなに、ガチでホラー。一瞬知り合いかと思ったがいかんせん心当たりが無さすぎる。 「えっと、すみませんが、人違いじゃないですか…」 だってやっぱ知らないし。 「いいや、俺にとっては君しかいない。」 んええ? 待て待て 「え、あの、何の話ですか。」 「制服越しからでもわかる引き締まった体、だがしかし、筋肉がつきすぎておらず、しなやか且つ鋭敏な動きが得意そうだ。バスケ部には是非とも欲しい人材だ。数多くの新入生を見て来たがふさわしいのは君しかいない。」 これは、ベタ褒めなのか、ていうか制服越しでなにがわかるの。 それにしてもバスケ部って、え、バスケ部じゃん。何でこの階におんの。 ちょ、水泳部の先輩、情報がちっがう。 どうやって返答しようか。 「ごめんねー、山ちゃんは、すっごい筋肉オタクでー、筋肉を見るために目がついているようなもんだからー、そっち方面の観察力が凄すぎるんだけどー、ま、気にしないでねー。」 チャラチャラ全開の茶髪がフォローに入る。 ていうか、一番でっかい人って山ちゃんって言うんだ。 「そ、そうなんですか。勧誘凄くありがたいのですが、自分はどこの部活にも入る予定はありません。」 さて、バスケ部は勧誘が強引だと聞いていたがどう切り抜けようか。 「なに、その体でどの運動部にも所属しないのか。ならなおさら我がバスケ部に来ないか。」 と、山ちゃん。 「そーだよ。おれ、結構君の雰囲気好きだし、君が入ってくれたらやる気が出るのに。」 と、チャラ男。 「何だって、ついにミッキーのヤル気スイッチが入りそう!君が来れば俺らバスケ部は安泰だよ。そうだよな!りっくん!」 と、誰か。 「ああ。ついでに山部も落ち着くだろう。悪いが、バスケ部は悪いとこじゃないから体験にでも一回来てくれないだろうか。」 と、りっくん(仮)。 一歩また一歩と俺を壁際に詰めていきながら勧誘の言葉を口にしないでほしい。切実に。怖いから。 どうしたものか。 「本当にどこにも入るつもりはありません!」 「筋肉があるのに何故だ。」 「おれに褒められてー、嬉しくないのー?」 「お願い!」 「頼む。」 ドン! ひいい ついに壁まで詰められた。4人に包囲されるってもう、絶体絶命じゃないか。恐ろしや。 「戸惑っているけど無表情な顔も可愛いねー。」 だ、黙ってください、チャラミッキーめ。 「じゃあー、うちの部員に勝てたらー、入部しないの許してあげるー。特別に普通なやつを選んであげるからー、負けたら絶対入るんだよー。」 ここはバスケ強豪だ。普通の奴と言ってもその辺のバスケ部とは比べものにならないほど上手いだろう。でもやるっきゃないか。 「わかりました。いつやるんですか。」 「うーん。勧誘は今日までだけどー、来週火曜日まで入部は受け付けているからー、来週月曜日にしよっかー。てゆーか、君勝算はあるのー?諦めておれと、ずっと遊んでくれてもいいんだよー?」 それは嫌。 「勝てるかはわかりません。でも帰宅部がいいので勝ちに行きます。」 その一言でやっっと解放してくれた。 はぁ。帰ろ。
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