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俺の名前を知っていたのは彼が風紀委員だからだろうか。あくまで憶測だが。
半ば引きずられるようにして、会話もなく風紀室に連れていかれた。
災難すぎる。
割とすぐに風紀室らしき場所に連れて行かれた。ドアを開けて中に入れられると、まあ、予想通り広かった。
広い職員室のような作りで、机、パソコンが並んでいる。唯一何が違うかって言うと、仕事をしているのが生徒だっていうこと。
そして、一部は疲れ果ててダウンしている。
うわーいここもブラックだーい。
「君、こっちやで。」
室内奥の茶色のドアを開け、俺をそこに押し込もうとする先輩。別にそんなに押さなくても…
最後の望みをかけて、周りを見渡すが、委員たちの「あー、こいつ終わったな。ドンマイだな。」
みたいな哀れみの視線しかなかった。
多分俺が何かやったと勘違いしている。
されるがまま、部屋に入る。
すぐ目についたのはシックな革張りの
ソファー、シンプルな木のデスク。
そして、そのデスクに肘をついてこちらを見る美形。ふわっとした濃い茶色の髪を緩く七三にわけている。
あ、目ぇあった。
「ごめんやでぇ〜、無理やり連れてきてぇ。そのソファーにかけて、俺たちとお話しせえへん?」
金髪の先輩がそう言う。正直嫌だ。
けど部屋の雰囲気からしてどうやら俺に拒否権はないようだ。
渋々ソファーに座る。自重でどこまでも沈んでいきそうなソファーでさえ、俺をここにとどまらせようとしているようで嫌気がさす。
居心地悪りぃ。
「単刀直入に言う。君、風紀に入る気はないか?」
「え」
まさかの勧誘だった。まじか。
心当たりはないにしろ普通に怒られるかと思った。茶髪の男は続けて言う。
「ああ、そういえば自己紹介していなかったな。俺は八神旭、風紀委員長だ。」
「んで、俺は風紀幹部の三浦ヒロタカやでー。気軽に呼んでねん。」
「あ、多分ご存知の通り海崎碧です。あ、あと自分は今どの部活、委員会にも入ろうと思っていないので、すみません。」
「そうか。三浦、お前説明した?」
「ん、え、あ、そういやしてへんかもなぁ〜」
お、お、雲行きが怪しい。
「まぁいい。俺がする。まず、海崎、寮へ向かう道で君を試すような真似をしてすまなかった。」
やっぱそうなのか。風紀に入るかと聞かれた後に、多少だが勘づいていた。
「いや、まぁ突然で驚きましたが、ここに呼ばれたのがお説教じゃなくて良かったです。」
「君はやけに落ち着いているな。状況の判断もなかなか速そうだ。風紀では毎年格闘技ができそうな人材を調査している。何せ、この学校は色々あるからな。
君は空手か何かで賞を取った記録は無かったが、俺の独断で動けると判断した。だから三浦に君の強さを測るように頼んだ。
三浦がどのような試し方をしたかは知らないが、君は相当強いと聞いた。」
「あ、あは、そんなことはないですよ。」
三浦先輩に背後から蹴り入れられた、っていう鬼畜すぎるやり方だったけど、先輩の身を案じて言わないことにした。
なんかさっきまで無かった圧があったから。
委員長は鬼怖だとみた。
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