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「今日からうちのクラスの仲間に加わった、宮沢紗良さんです。皆、いろいろ教えてあげてください」
教壇に立って、好奇心に溢れた視線を送るクラスメイト達を見渡した。
こんなにたくさんの、同い年の人達の中に入るのは初めてで、どうしていいかわからない。
しどろもどろになりながらもなんとか自己紹介すると、にこやかに拍手してくれる人もいて少しほっとする。
担任の先生も、シスターに似た穏やかな女性の先生で安心した。
「宮沢さんは森野くんのご親戚なのよね。森野くん、いろいろ教えてあげるんですよ」
慧さんが機転を利かせてそんな嘘をついていたのだった。その方が、変な詮索を受けないだろうと。
先生の言葉に、一斉にクラス中の視線が瞭に向けられる。
彼は心底迷惑そうな顔をして頬杖をつき、窓の外を見ながら「……はい」とだけ呟いた。
先生のはからいなのか、瞭の隣の席に案内される。
一番後ろの、窓際の彼の席の右隣だ。
座った時、ちらりと瞭の方を見たけれど、彼はこちらに振り向いてはくれなかった。
一緒に暮らすだけでもしんどいと思うのに、嫌いな奴と同じクラス、隣の席なんて苦行だろう。
ますます申し訳なくなって、学校内で彼に関わることは諦めた。
「あの……宮沢です。よろしく」
瞭とは反対の、右隣の席の女子に話しかける。
ショートヘアがとても似合っている、クールな雰囲気の美少女だった。
彼女は私の方を一瞬だけ見ると、何も言わずに視線を本に戻してしまった。
あれ、何か失礼なこと言ったかな?
アンナ園では同い年の子がいなかったし、勉強もシスター達にマンツーマンで教わっていたから、友達の付き合い方がよくわからない。
もう一度話しかける勇気もなくて、私も黙りこんだ。
学校生活も前途多難だなぁ。
そんなことを考えながら、黒板をぼんやりと眺めた。
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