【瞭】

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「宮沢さん、一緒にお弁当食べよ!」  なんとか無事に午前中の授業を終えた。だいぶ緊張したけど、少し慣れてくると楽しい。皆で勉強しているという一体感が、初めての感覚でくすぐったかった。  それに、こうして気さくに声をかけてくれる子もいる。  救われたような気持ちで、お弁当を手に持ち頷いた。  ふと、両隣の席の二人をチラ見する。  瞭はいつの間にか席を立っていたのか、その姿はなかった。  右隣の美少女は。 「あ、あの……一緒にお弁当」  最後まで話し終えないうちに、彼女は立ち上がり去っていく。 「ああ、あの子はほっとけばいいよ」  困惑する私に、声をかけてくれた女子の一人が言った。 「吉池(よしいけ)美羽(みはね)だよ。すんごい暗い子。誰が話しかけてもあんな感じだから、気にしなくていいよ」 「そう……なんだ」  彼女のことが気になりつつも、クラスメイト達に誘われて中庭に向かった。  かすかに金木犀の香りがするその場所は、日差しが心地好くお弁当を食べるにはもってこいだ。  幾つものベンチには先客が楽しそうに話していて、私達も同じように空いていたベンチに腰を下ろす。 「うわぁ!宮沢さんのお弁当美味しそう!」  クラスメイトの一人、高岡さんが声を上げた。  彼女と同様に私もびっくりする。  綺麗な黄色のふっくらした卵焼きと、ハート型のハンバーグ、鮮やかな緑のほうれん草のソテー、アボカドと海老のサラダ。桜でんぶ付きのご飯には、海苔で『ガンバレ』と描いてある。  可愛らしく彩りの良い中身に、ごくりと唾を飲み込んだ。  信さん、朝からこんな素敵なお弁当を用意してくれたなんて。 「お母さん料理上手なんだね」  ……お母さん。高岡さんの言葉に、信さんの笑顔を思い浮かべて顔が綻んでしまう。  ぱくりと卵焼きを頬張ると、その優しい甘さに緊張していた心が解れて、ほっとした。 「ねえねえ、宮沢さん!森野くんと親戚なんだって!?」 「う、うん。そうなんだ」 「いいなー!森野くん、超イケメンじゃん!」 「めちゃくちゃ人気なんだよ!皆、森野くんと話してみたいって思ってる」 「イケメン!?人気!?」  高岡さん達の言葉に面食らう。  瞭が学校でそんなふうに思われているなんて、想像もしなかった。
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