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だけど、学校という錯綜した世界に順応するのは、そう甘いものでもない。
放課後、掃除当番で中庭の落ち葉を掃いていた時、私は再びそれを思い知るのだった。
「宮沢さーん」
数日ぶりに高岡さんらグループに声をかけられ、思わず身体がすくんでしまう。
あれからしばらく相手にされることがなかったから、嫌な予感しかしなかった。
「……何?」
無意識に声がうわずる私を、彼女達はくすりと鼻で笑った。
「なにその態度。感じ悪」
「せっかく掃除代わってあげようと思ってんのに」
「え!?」
真意がわからずに困惑しているうちに、背後に感じる気配。
驚いて振り返ると、見知らぬ男子が三人、ニヤニヤと笑いながら私を見つめている。
校章の色が違うから、上級生であることがわかった。
高岡さんは微笑みながら言った。
「宮沢さん、先輩達が遊びに連れてってくれるって言うから、掃除は私達が代わってあげるよ」
「何言って……」
「いいじゃん、紗良ちゃん!俺らと一緒に遊ぼ?」
品定めしているような三人の視線に、強烈な嫌悪感が襲った。
慧さんや瞭、信さんとは全く違う、いやらしい眼差しだった。
「先輩、好きにしちゃって下さい」
高岡さんのそんな恐ろしい言葉を聞いた途端に、血の気が引いて身動きがとれなくなる。
「じゃあいこっか!」
彼らのうちの一人が私の腕を掴んだ瞬間、ゾワッと虫酸が走った。
「触らないで!」
睨み付けながら思いきり腕を振り払うと、相手はあからさまに怒りを露にしている。
その表情に怯んでいるうちに、思いきり突き飛ばされた。
どすんと情けなく尻餅をつく。見上げた先にいる先輩と高岡さん達の笑みに、ごくりと固唾を飲んだ。
「調子のってんじゃねーぞブス」
「俺らが相手してやろうっつってんのに」
「ホント、可愛げないったら」
高岡さんがそう彼らに同調すると共に、おもむろに塵取りを手に取った。
「森野くんのお姫様気取りしてるから、花吹雪でもかけてあげようか」
そう言って微笑みながら、集めた枯れ葉やゴミを私の頭上に散らすのだった。
咄嗟に目を瞑って、再び開いた時。
____「瞭……」
遠くの方からやって来る瞭と目が合った。
瞬時に感じたのは、こんな情けないところを見られてしまったという羞恥心だった。
彼は唖然と目を見開いた後、恐ろしい程に顔を歪ませて勢いよく走ってくる。
殴ってしまうかもしれない。そんな予感がしてならなかった。
瞭を制止しようと、私は声を張り上げた。
しかし、彼よりも先に私達の前に現れた人がいる。
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