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「りょ……」
「バカ!間抜け!重いんだよ!食いすぎなんじゃねーの!?」
想像していたものと真逆の、至って普段通りの瞭に面食らって、声も出せずに固まった。
そして、じわりじわりと涙が滲み出る。
「なんなんだよ!突然飛び出して!何でそうやって……」
いつの間にか嗚咽を上げて泣きじゃくってしまった私を、ぎゅっと抱き締めてくれる瞭。
「……頼むから、心配させんな」
どうしてそんな、心底安堵したような声を出すんだろう。
たまらなくまた胸が絞めつけられて、息をするのも辛かった。
彼の腕の力は緩むことなく、私の涙も止まることを知らない。
「憎んでるなんて嘘だよ。……本当は、ずっとお前に会いたかった。会えて嬉しかった」
震えるような声で、言葉を振り絞るように彼は言った。
そんな彼が愛しくて、その言葉は嘘ではないような気がした。
「ずっと支えだった。お前に会うことが。手紙だって、本当は何時間もかけて書いてたんだ」
「瞭……」
「でも、優しくできなかった。慧がお前に仕返しすると思ってたから。止めたかった。……ここから逃げて欲しかった」
初めて聞く彼の本心だった。
だけどそれを喜べるほど、私だってバカじゃない。
私は彼らを傷つけ、家族を奪った人の娘だ。それなのにどうして、こんなにも大切に想ってくれたんだろう。
それは今の私にとって、苦痛でしかなかった。
「……ごめんなさい。母が瞭達の家族を奪って。苦しめて……ごめんなさい……」
「僕のせいだよ!」
頭上から再び悲痛な叫び声が響いた。
斜面の上で、信さんは跪きながら涙を流している。
「あなた達の家族は、僕のせいで死んだんだ!」
信さんの言葉に、私も瞭も唖然として彼を見上げるしかなかった。
しばらくして、瞭の「どういうことだよ」という困惑の声が漏れた。
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