【紗良】

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 月明かりに照らされながら、私達は再び庭のウッドテーブルに集まった。  それはどこか儀式めいていて、緊張感は募るばかり。 「じゃあ、俺から話そうか」  私の向かいの席の慧さんが、一番最初に口を開いた。 「紗良をこの家に呼んだ理由はこれだよ」  彼はテーブルの上にA4サイズの茶封筒をそっと置いた。 「………………?」  何を意図しているかわからずに戸惑う私に、彼は優しく微笑む。 「紗良が俺達の妹なのかどうかを調べたかったんだ」 「妹……」  どくんと鼓動が速まる。  目眩がしそうだった。 「確かに俺達は、紗良のお母さんのことを恨んだ時期もあった。でもそれ以上に、……君のことが心配だったんだ」 「慧さん……」 「俺には瞭がいたし、瞭には俺がいた。だから何とか生きてくことができた。だけど、あの日お茶会にやってきた心細そうな女の子は、今たった一人で泣いているんじゃないかって、俺らは気が気じゃなかったんだ。本当は、すぐにでも迎えに行きたかったけど、まだガキだったし、周りの大人達に邪魔されて。影で支援することしかできなかった」  溢れる涙を拭うことも忘れ、ぼやけた視界の先にいる二人を見つめた。  慈愛に満ちた、神様のような二人を。 「もしかしたら紗良は父さんの子供かもしれない。そう思ったら家族が増えた気がして、嬉しかった。だから絶対に、俺が大人になったら迎えに行こうと思ってたんだ。それが俺の支えだったんだよ」  ああ、なんて私はバカなんだ。  そうやってずっと大切に思い続けてくれたのに、恨まれているなんて怯えて。  泣きながら何度も頭を下げると、慧さんはポンポンと頭を撫でてくれる。 「謝らなきゃいけないのはこっちだよ。不安にさせて、ごめんね。これが俺の種明かし。次は、瞭の番」  急に話を振られ、瞭は「俺!?」と目を見開いている。 「別に俺は種明かしなんてない」  私から目をそらす瞭を、慧さんは笑った。 「あるだろ。瞭は、紗良が妹ではないことを願ってる」  ぶっと勢いよくお茶を噴き出した瞭。みるみるうちに顔が真っ赤になるので、拍子抜けして私の涙も止まってしまった。 「瞭は昔から、紗良のことを一人の女の子として見てたから」  瞭は否定も肯定もせず、更に赤くなるばかりで、思わず自分の顔も熱くなる。 『本当はずっと会いたかった。会えて嬉しかった』  そんなさっきの言葉を思い出してしまって。 「紗良は、俺達と血が繋がってると思う?」  頬杖をつきながら悪戯に笑う慧さんに、私は首を横に振った。  どうか繋がっていませんようにと祈るしかなかった。  震える手で封筒を開ける。  『DNA鑑定書』という文字が顔を出した。  結果は…… 「……“血縁関係は認められません”」  ほっと安堵のため息をついてしまった。  そして同じようにため息をついた瞭と目が合う。 「残念だなぁ」  慧さんだけは眉を下げて苦笑していた。  
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