解決編

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 僕は二人と別れた後に白戸家に向かっていた。学校近くの住宅街の一角、木造の一軒家が裕也の実家だ。家族とは疎遠になっていると苦笑しながら話していた裕也の顔が思い出される。 「この度はご愁傷様です」 「あなたは・・・少年院の人ね」  悪の道に一度でも踏み入れた人間が、真っ当な道を進むのは難しい。母親はまだいるのかとそんな態度を僕に向けている。 「だぁれ?」  女の子が階段から顔を見せてキョトンとしている。裕也と最後に交わした話は家族のことだったか。悪さばかりで家に寄り付かなくなった裕也には五歳離れた弟がいる。 「二階に行ってなさい!!」  孫に厳しすぎやしないかとは言えずに苦い思いが湧いてくる。家族を顧みなかった男の末路がこんな風になるなんて。 『京介、オレみたいになるなよ?』  悲しそうな顔を浮かべ安酒を煽っていた裕也の心残りがあるとすれば、家族のこと。縁を切ると約束し会えず終いだった弟夫婦の間に生まれた姪っ子が確か。 「もういいですか?」  家族が知らない裕也は、社会復帰に一生懸命で、友達を気遣って連絡していた優しい彼を知ってほしいなんて図々しい話なのか? 「裕也さんの話を・・・」 「縁を切った息子の話なんて・・」  トントンと小走りで階段を下りてくる女の子は、先程と同じように顔を覗かせて。 「おばあちゃん、あたし助けてもらったの」  泣き笑いを浮かべて祖母に打ち明ける真相。僕のことを後ろから尾行していた彼らが加わる。
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