3あたし、あたしさんと

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 私、三角すずえは市営住宅の一室で一人暮らしをしている。話し相手がいない私はテレビに釘付けで、独り言を呟いている。テレビが話し相手なんて感覚わかるかしら? 『犯人はあなたです!!』  ミステリドラマを見て一緒に推理して、あの人でもない。この人犯人役ばかりよね?って言って楽しむの。料理番組を見れば、美味しそうな画面を見ながらご飯を食べる。誰からスマホ使えって言われたって。まあまぁそんなに急かさないでね。 『三角さん、いつもすみません』  年寄りはね時間と暇がたっぷりあるの。可燃ゴミの日は私が楽しみにしている日でもある。住人同士の井戸端会議よ。いろんな話が聞けて楽しいの。 「お茶入れるね」  お喋りは止まらない、頃合いを見て助手さんがお茶を足してくれる。ゆっくり、ゆっくり飲んでまた口を開こうとした時、眼帯さんの書き物が終わったのか、私の話が再開されぬまま確認事項に入っていく。やっぱり嫌だったんじゃない・・・ 「『あたし、あたし』さんの追求には時間とお金がかかります。お話しを聞いたところ、近所付き合いをされているみたいなので」  ご近所付き合いと話し相手を結びつけている人ね。ご近所付き合いなんて数秒で終わってしまう。昔なら調味料の貸し借りの合間に、家族の話を聞くことが多かったのに。 「私は迷惑ばあさんなのよ!!」  言い切って思い浮かぶ、苦笑して断る奥さんたちの顔。私は独り者で嫌われている。 🐝🐝🐝🐝  市営地の中にある公園で子供が遊ばなくなったのはいつからか。みんなスマホばかり見てて。それが元で危険なことが多くなったじゃない? 「ぼく、送るよ」  探偵事務所の扉が開き助手さんが私の元に駆け寄る。階段を軽快に下りている様子で若さを感じ、老いている動きを見て落ち込む。手すりで、一段一段踏みしめて下りるのがやっと。 「助手さん優しいのね」  ビルの二階で聞いているだろう眼帯男さんに聞こえるように大声で言う。明かりがない部屋、ただいまと言っておかえりとひとりで返す寂しさ。慣れていて平気だって思ってた。これから先も一人なのだからと言い聞かせて。 「怖くなったのよね『孤独死』が」  民生委員さんや市役所の人に勧められて購入したスマホ。遠縁になっていた友達と繋がれたけれど、待っていたのは避けられないだったの。
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