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僕の話を親身になって聞いているのは、チャラそうな男。敬語なしに次から次へと聞き返している。所長であろう男性は、隣で必要事項を書いているだけ。ガリガリと飴玉を噛み砕く音がする。
「友達の写真見せてー」
明るい彼が聞いてくる。彼の話術か、それとも嫌味を感じさせない雰囲気からか。自然と話してしまう僕。僕の言動を見逃すまいと、眼帯男に見られ続けていても苦ではない。
「友達の名前は白戸裕也です。明るくて恨まれたりはしないやつだった・・」
裕也と僕が映る画面をテーブルに置く、裕也との思い出話を話していくうちにぽたぽたと涙が溢れる。片手で顔を覆い瞼を閉じる。
「悲しい時は泣いていいんだよ?」
「う、ぐ・・・っつ!!!!」
僕は泣きまくった泣いても泣いても裕也はもういない。ニュースで知って戸惑い、泣くことを忘れていた。信じたくない気持ちが強かったんだ。
落ち着くため珈琲を一口啜る。苦味の中にしょっぱい感じがしたのは、涙の滴が零れ落ちたから。
「伊達さんは前アリなんですね」
僕を見た眼帯男の低い声が問いかけていた。
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