3あたし、あたしさんと

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 学生時代に親しくした友人か?社会人になってからの友人なのか?  ぱら、ぱらとページを捲っては懐かしい顔に目を細める。みんなそれぞれの道を歩き始めて数年が経つ。年賀状で送られる近況報告が楽しみで、いつしか枚数が減っていた。 「あたし、あたしさんの電話をはじめて受け取った時、嬉しかったの」  友人に家族が増えていた時、私は働くことだけが生き甲斐だった。周りに見合いを勧められて何人かの人と付き合ってみたけれど、奥ゆかしくない私から離れていくばかり。 「昔は女は男はという社会だから、勝ち気で男勝りな性格の私には結婚は不向きだったのよ」  私が若い頃は何かと問題ばかり起こす側だったわ。上とか下とか関係なしに思ったことをズバズバと言っていた。きっと恨まれたりしたことでしょう。 「声に聞き覚えがあるとか?」  助手さんは私に関わりがある人物だと想定して聞き込んでいる。眼帯男さんにも筒抜けなのよね?私に見えないようにしているけど、アルバムを何冊か手に取っている間に、電話をしているもの。 「さぁ?そちらの得意分野じゃありませんの」  嫌味みたいに聞こえたかしら?断っておいてさりげなく調べてくれている。嬉しいような複雑な気持ちになっていた。
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