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通された部屋は三人がけのソファーが対面に置かれて四角い小さなテーブルがあるだけの部屋。
「守秘義務は守りますので」
何度も同じ言葉を繰り返す。個人情報を聞き出すのは難しい。探偵と聞けばなおさら口を閉ざす者のほうが多い。一方的なやり取りが繰り返されてばかりで、なかなか進まない。
もう無理だろうかとノートを閉じ立ち上がろうとしたとき、向かいに座る田丸が口を開いて長いため息交じりに三角について語り始める。
「役者を目指してたらしくてね。嘘か本当かわからないくらいの迫真の演技をするのよ」
ふぅぅと吐き出した田丸は苦笑いを浮かべている。あたしさんの話を聞いたときも三角が作った作り話だと捉えているヘルパーが大半なのだと話す。
「演技仲間で三角さんと親しくしている人は?」
「三角さんには言えないんだけど、あたしさんなんて人は三角さんが作った架空の人物だと思ってるんで、探偵さん本気にしなくもいいと思いますよ」
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田丸惠子から聞けた情報は、三角が演技好きで作り話の延長戦の架空の人物の可能性があるということ。
『あたしたちヘルパーや役所の人たちにも平気で演技する人ですから・・・探偵さん、騙されちゃったんではないですか?』
三角に関する情報が集めきれていない。役者志望をしていた時期は70年も前の話で、大手事務所で活躍しようとしていたのか、それとも地元のこじんまりとした舞台役者なのか?捜査は振り出しに戻される。
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