美声のボディーガード

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それからだ。 ふとした瞬間に__視線を感じるようになったのは。 こないだの公開収録で面が割れたことで、街で声を掛けられたりもした。 けど__。 部屋の中を見回す。 まるで、知らない人の部屋にいるような。 以前なら、いくらすれ違いの生活とはいえ、亮太が居た。追い出したのは私だ。今さら、誰かに見られているような気がするから戻ってきてなんて__。 「自意識過剰すぎるだろ」 そんな、小馬鹿にした声が聞こえてきそうだ。 そう、ただの思い過ごし。 そうに違いない。 木曜日の収録を終え、反省会と報告書を作成する。 「先輩、飯でも行きませんか?」 「でも企画書、上げたいのよ。来月からの新企画、あなたも出さないとダメでしょ?」 「俺、もう出したんですよ。おまけに涼子さんからお墨付き貰ったんで」 「なら余計、仕上げてから帰るわ」 「お手伝いします‼︎」 側にまとわり付く柴田くんを雑に追っ払い、私はデスクに齧り付く。 気がつくと、もう辺りは暗い。 それでもまだ満足できる企画が出来上がらない。ここら辺で一発ガツンと当たる企画を立ち上げたい。 濃い目のコーヒー片手に、私は静かな廊下を歩く。 スタジオは3つ横並びで使用される。一つが終われば次の番組はその横、それが終わればその横というようにズレていく仕組みだ。 私は__明かりが灯っていないスタジオに入った。
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