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リスナーだ。
恐らく40歳は越えているのではないか?
決して私と目を合わせようとせず、多動の兆候がある。
出入り口に立ち塞がっているが__リスナーだ。
「番組、聴いてくれてるんですか?」
努めて普通の口調で問いかけた。すると男は、もじもじしながらも何度か頷く。
「ありがとうございます。お便り、紹介したことありますか?」
この問いかけには、激しく首を振った。
顔が赤らみ、恐らく怒っている。
それでも、何度も何度もメールやファックスを送ってくれているのだろう。だが採用されない。
私が、どうしたらいいのか考えあぐねていると__。
「名前‼︎」
急に声を上げた。
「名前、ぼ、僕のだけ読まなかった‼︎」
「それは_この前の公開収録で?」
「そう。録音したから、間違いない‼︎」
「ごめんなさい」
素直に謝った。
ラジオネームの漏れがあったのかもしれない。となると、全員の名前を読み上げると宣言した私のミスだ。
「もし良かったら__次の放送でお名前を読み上げてもいいですか?」
あくまで、こちらはお願いする立場だ。
その申し出に男は、えっ⁉︎と顔を上げて、初めて目と目が合った。
しかしそれも僅か数秒のこと。
頭を掻き毟(むし)り出した男は、急に飛びかかってきた‼︎
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