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__亮太?
震え上がるような声が足元から響き、文字通り男は目を見開いて震え上がった。
あとはスローモーションでも見ているよう。
亮太が男を呆気なく取り押さえ(合気道の有段者)、駆けつけた警備員に引き渡し、スタッフやら社員やらが騒ぎを聞きつけて集まる中で__。
「大丈夫か?」
床にへたり込んでいた私は、差し伸べられた亮太の手を取った。
そのまま引き上げられ、それでも足に力が入らずによろめく。
「もう心配ない。俺が側にいる」
抱き締められ、囁かれ、しがみつき、声が心に届く。
皆の視線などもう__気にならない。
ただ私は、掛けられる声に心が落ち着くその時間に寄り添う。
「愛子‼︎大丈夫なの⁉︎」
涼子さんが駆けつけてきてやっと__体を離す。名残惜しげに。
「打ち合わせでしょ?私はもういいから」
「ダメだ」
亮太がピッタリ側から離れない。いくら側にいるとは言ったけど、ボディーガードじゃないんだから。
その後、涼子さんと一緒に警察署に向かった。もちろんボディーガードも抜かりはない。
男がラジオのリスナーであり、今回の事件に至った経緯を説明すると、男の供述とほぼ一致したらしい。
訴えるか否か__。
気がつくと、私は口走っていた。
「会わせて、もらえませんか?」
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