美声のボディーガード

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そう言われれば、返す言葉がない。 嬉しいし正直、今は有り難い。 番組愛がああいう形で事件になりかけたが、隣に誰かが居てくれるのは心強いからだ。 かといって、このままでは亮太の番組が放送されない。それは、信用問題にかかわってくるし、なにより__番組を待っているリスナーがいる。 この窮地を脱するにはどうしたら__。 「皆さん、こんばんは。ミッドナイトシアター、徳川亮太です。今宵も皆さんを夢の世界に誘(いざな)います。それでは本日のオープニングナンバー___」 いつも、枕と共に聴いている声が、目の前の空間で泳いでいる。 これはこれで浮遊感があるというか、やっぱりコイツの声は__凄い。 「ちょっと‼︎仕方なく来たのに、なんでこんなに密着してるのよ‼︎」 小声で抗議する。 真隣に座らされ、がっちり手を握られているからだ。 しかもサブにはスタッフが1名。 「心配するな。あいつは俺の下僕だ。ここで見たことは、墓場まで持ってく忠誠心がある。それに、さっきスタジオで抱き合ってバレたんじゃないか?」 「それは__」 私も気になっていた。思わず抱き締められ、縋(すが)ってしまった。 少なくとも、局内では勘づかれた恐れがある。 けど__それならそれでもいいと、手の温もりを感じながら思ってもいた。 だって私は__。
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