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甘いミルクのようなスウィートボイスが、心まで溶かしてしまう。
思わず身を委(ゆだ)ねてしまいそうな、甘美な罠。
でも私に、仕掛けられたトラップに引っかかる資格があるのか?この声と引き換えるほどの価値が私に__。
そんな迷いを見通してか、亮太が静かに語り出す。
「俺はなにも、夢を諦めちゃいない。これから先、色んな事に挑戦していくつもりだ。その時に__愛子、お前に側に居てほしい。お前が隣に居ないなら、俺の夢は叶わないのと同じことだ」
痛いくらいに強く抱き締められる。
「俺を励まさなくてもいい、支えなくてもいい。お前はお前で、これからも輝き続けて欲しい。俺が嫉妬するくらい眩しくな。俺たちは__同期のライバルだ」
「同期のライバル…」
「この声で__全国制覇しないと、ご先祖様に顔向けもできない。プロポーズの返事を聞かせてほしい」
「私は__」
言葉に詰まる私の頬に手を添えて__。
「俺のこと、好きか?」
大好き。
心から。
でも__。
「__嫌い」
そう呟くと、亮太が嬉しそうに笑う。
そう、この顔はよく知ってる。
絶対に勝つことを知っている、将軍の顔。
そして将軍は、私を追いつめる__。
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