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「ちょっと、シャキッとしなさい‼︎」
ディレクターの涼子さんに怒られた。
打ち合わせにも、どことなく身が入らない。
こんな時、忠犬柴田が居たら、主(あるじ)の変調をいち早く察知し、シッポを振り振り全力で励ましてくれるのだが。
ヤツも、今が正念場だ。
私の背中を追いかけ、追い越そうとするに違いない。
先輩として、ここで無様な姿なんて見せられない。
「よし‼︎」
自分を鼓舞し、スタジオに入る。
いつもなら、ここで柴田くんと短めのリハを行うが、あれから新入りのアシスタントに変わった。
そういや打ち合わせにも居なかったけど?
「あぁ、降ろしたから」
サブから涼子さんの声。
「だって、なんだかあんたと息が合わないし」
「えっ、でもアシスタント居なかったら大変ですよ」
「誰もあんた一人でやれって言ってないわよ」
「良かった、ビックリさせないで下さい」
ホッと息をつき、オープニングトークをおさらいする。
どんなに仕事ができないアシスタントでも、居てもらわないと。
そのアシスタントを育てるのも、私の仕事なのだから。
「あんたに1番ピッタリなアシスタントだから」
そんな声に振り返る__。
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