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「うんっっ__」
「聞こえねーな。もっとエロくなれって」
耳元で甘く囁く声がノドの辺りで破裂し、流星となって体の四隅に迸(ほとばし)る。
それでいて、がんじがらめに押さえつけられ、自分に手足を伸ばして身を委(ゆだ)ねることもできない。
「身動き取れないほうが感じるもんな」
「そんなこと__」
「ないか?」
パッと自由にされると、なんだかどこか置き去りにされたようで__。
__愛ちゃん?愛ちゃん、聞いてる?」
「えっ⁉︎」
気がつけば、ディレクターが新聞を丸めて机を叩いていた。
「あ、すみません。ちょっと寝不足で」
「我らの愛子ちゃんを寝不足にさせる輩は、どこのどいつだ?いや、俺んだ⁇」
自らの鼻先を自ら指で指し示すのは、番組のメインパーソナリティーの宮島さん。
「宮島さんなら私、爆睡します」
「もう、愛子ちゃんツレないなぁ」
「じゃ、今日の話題はテニスでいいですね?そっから健康体操にもっていく流れで」
ディレクターの言葉に、私は頷いた。
危ない危ない。
番組の基盤である打ち合わせで、心ここにあらずなんて。宮島さんの助け舟がなければ、雷が落ちるところだ。
でも__。
私は再び思い出していた。寝不足にさせた輩を。
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