友と呼ぶか、好きと呼ぶか。

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「おっはよぉーう!」 「おはよう! ねぇねぇ、昨日の番組見た?」 「みたみた! タケイ君ちょーかっこよかったよね! ダンスもキレッキレでヤバかった!」 「ヤバいよね! 私この間のライブも見たけどさホント……」  あぁ、教室のどこかでガールズトークが勃発している。 クラスの同級生(おんなのこ)たちはあんな感じでいつもアイドルの話をしたり、恋話したりして盛り上がっているけれど、今日は恋話じゃなくてよかった。 自然といつも耳に入ってきてしまうから、絶賛、恋の悩みに悶え中の私には正直言ってキツい。  実は私は女の子の友達が少ない。小さな頃から男の子勝りで男の子とばかり遊んでいたからか、あまり友達と呼べるほどの女の子友達がいない。 本当にいない訳では無いけれど、高校生になってからは数少ない女の子の友達とも別れてしまったし、馴染みのある顔ぶれとは高校入学を機にほとんど別れてしまった。 だけど、問題となっているとは高校に入ってからも一緒になった。 そして、今に至っている。 「おはよう」 「あべしっ」  朝の一声と共に、私の頭にチョップがかまされる。 「ちょい、なぜに頭にチョップするの。やめて」 「いや、だってチョップしたくなる頭がここにあったから」  と言って、私の前で肩をすくめて言葉をこぼす男子高校生。 コイツこそ、私の幼き頃からの無二の親友であり、恋の仇(多分意味間違ってる)のユキヒロである。通称ヒロさん。 「チョップしたくなる頭てなんだ。空手で使う板か」 おのれ忌々しい。机の上にうつ伏せていたから鼻とおでこが押しつぶされて痛い。今度仕返ししてやるからな、覚えておけよ。 「…ん? なんだよ、なんでそんなムスッとしてるの? そんな痛かった?」 「痛かったよぉ!鼻ごつんてなったわい!」 「あははっ、ごめんよ。悪かった」  く、あどけない顔しやがってがらにまったく。憎みたくても憎めねぇじゃねぇか!! 「…ん? どったの? 急に黙っちゃって」 「うぇぇ?! 別に何もないよう!」  ……くそ、最近普通に話してるだけでもなんかモヤモヤするからヤダな。 昔はこんな事全くなかったのに。いつもヘラヘラ一緒に笑って、肩組めるくらいもう少し打ち解ける気持ちだったのに。 恐るべし、恋煩い。 もしも"お前のことが好きでモヤモヤしてるんだけど"なんて言ったらどんなリアクション取られたかな。 死んでも言えないけれどそんな事。 「えぇー? なんか変なの。最近やたら不機嫌じゃない? 鼻痛かったのは分かるけどそれだけじゃない気がする」 「ふぁ、別に何でもないわい! ただの寝不足じゃ!!」 「なんだよ寝不足なの? 夜何時に寝てるのさ?」 「……十時」 「嘘つき。顔に出てるぞこのやろぉーちゃんと寝ろぉぉぉーーー」 「ぁぁぁぁ頭の先っちょ突っつかないでやめて、嘘ついてごめんなさい。許して」 ……キーン、コーン、カーン。校舎のチャイム音が響く。 「あ、悪い。じゃあ戻るわ」 「あ、うん」 軽い別れを交わし、そそくさと己の机へと戻ってゆくヒロさんの後ろ姿を眺めながら私は一人頬杖をつく。  ……はぁ、本当に恐るべし、恋煩いだなぁ。 小さな頃が懐かしいよ。 保育園と小学校ではいっつも戦隊ごっこしたりかけっこしたりして遊んだし、たまに木の棒をどこからか持ってきて「決闘だ!」とか言って遊んだりもしたっけな。 頭の中で決闘ごっこをする私とヒロさんの小さな姿が思い浮かぶ。 中学生になってからは落ち着きはしたけれども、小さな頃からの私たちの関係は変わらない。 ーーだけど、私の中では変わってしまった。 「……………。」 思いながら、私は自分の席に着くヒロさんの後ろ姿を静かに見つめるのだった。
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