朝焼け 

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昼休みに教室の前の廊下で、三人の女子が金岡さんを囲んで小声で何かを喋っていた。 木村さんと、竹田さんと、吉川さんだ。 全員、短く上げたスカートを履いて、時折、手鏡で前髪をチェックしたりブラシで髪を梳いては「女子」であることを主張していた。 木村さんが目を吊り上げてひそひそときつい口調で喋っていた。 何を話しているかはよく聞こえなかった。 竹田さんが、そうだそうだという風にうなずくと、時折口を挟んでいた。 吉川さんは、手鏡で前髪を直してばかりで、口を開かない。 金岡さんは俯いていた。背中が小さく震えていた。 でも、金岡さんは泣かない。 両手をコブシにして、こらえている。 私は、ちょっと感動して立ち止まった。 木村さんと目が合った。 獰猛な肉食獣のような目。 きつくつり上がったその眼差しには、得体のしれない憎しみの感情があふれていた。 キャパシティいっぱいにまであふれかえった感情。 何を憎んでいる? 何を誤魔化している? ホントウは何を、望んでいる? 私と木村さんの視線が絡み合い切り裂くような時間が流れた。
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