朝焼け 

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ガシャン! 凄まじい音が、廊下まで響いてきて、私は足を留めた。   「何、何、何の音?」周囲がざわついていた。 「三組だよ。三組のキシモトがまたキレた」 「キシモト?誰それ?」 「ほら、東小の問題児」 「ああ、あの岸本くん」 あの岸本だか、どのキシモトだか知らないが、周りの人間が三組の窓に群がっているので、私も、後ろからちらっと覗いてみた。 教壇に一人の男の子が屹立していた。一切の物に寄りかからず、頼らず、ただ一人で自立している。そんな感じがした。前には、蹴り倒された机と椅子。そして、投げ出されて、頭を押さえている男子の姿があった。   岸本は両手をポケットにいれて、教壇の上から、彼をじっと見下ろしていた。制服の前ボタンはすべてはずれていて、ちょっとだらしない印象を受けた。切れ長の目は、怒りくるって細くつりあがっていた。対照的に口元は薄く結ばれている。   「怖い」隣の女子が小さくつぶやいた。
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