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「その時、ずっと黙っていた兄ちゃんが口を開いた。『盗ってないんだね』って。俺は直感的にこの人は信じられると思った。すごく透明な、清々しいまでに透明な目をしていたから」岸本は懐かしむように目を細めると
「でも、一年前に亡くなったんだ。自殺だったらしい」と話した。
「自殺……」私は低い声でつぶやいた。
小学生の頃、宿題をしながらリビングに聞こえてきた声を思い出した。
『僕の息子はね、自殺したんですよ』
鮮やかなテレビの画面、そして失われた日常。
「兄ちゃんの葬式に行った夜、一人で家の天井を眺めていると、突然、涙が溢れてきてさ。兄ちゃんに連れて行ってもらった場所とか話したこととか、走馬灯みたいに次から次へと蘇ってきて声を殺して泣いた。なんで死んじゃったんだろうって、死なないでほしかったって。本当に悲しいっていうのは、こういうことだって思った」岸本は、泣くのをこらえるかのように顔を空に向けた。
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