朝焼け 

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店先に無秩序につまれた電化製品。 ところどころに、大特価の文字が入った紙が貼りつけられている。 手前には、ポットやトースターなどの小型の商品、ワゴンに入った電池やプリンターのインク。奥には、冷蔵庫やテレビなどがところ狭しと、陳列されている。量販店の流れに押されて、時代に呑み込まれそうになりながら細々と経営を続けている、そんな店だった。 「こんにちは~。すみませ~ん。」岸本が大声で呼びかけると、中から眼鏡をかけた男性が出てきた。 「おおっ、晃ちゃん。ひさしぶり。なにを買いに来たの?」 晃ちゃん?そんな名前だったんだ。 私は、今さらだけど、下の名前を知らなかったことに気が付いた。 「いや……今日は、ちょっと聞きたいことがあって来ました。あっ、でも、ついでだから、これ買っていきます」 「それね。ありがと」 「最近、PCで作曲するのにハマってて」 と笑顔で返す岸本を私は凝視した。 作曲??イメージじゃない。 改めて、この人のことを何も知らないということに気付く。 作曲している姿を想像すると、いけないと思いながらも笑ってしまった。
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