朝焼け 

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「この穴、何?」 掃除の時に、同じ班の中島さんに聞いてみた。 前々から不思議に思っていた教室の後ろの床に空いた穴。 そこそこ大きくて、上からベニヤをうちつけてあるが 大きさが合わなくて隙間だらけだ。 「知らないの?」 「知らない」 「焚火の跡よ」 「焚火?」 「何年か前に生徒が授業中に、教室の床を勝手に燃やして焚火したんだって。学校は大騒ぎだったみたいよ」 「へえ」 私はしゃがんでベニヤの隙間から、穴の底を覗いてみた。 コンクリートと砂粒が見えた。 「寒かったのかな」ぼそっとつぶやいた。 後ろでは中島さんが、男子全員帰っちゃうなんて、サイアク~と叫んでいた。 「あっ。渡辺さん、私、今日、塾だった」 中島さんは突然そう言うと、私をじっと見た。 「ごめ~ん。どうしても帰らなきゃ」 ふむ。手を合わせて頭を下げたナカジマさんの髪が揺れていた。 「あと机、もとに戻すだけだから……ごめんね。渡辺さん」 中島さんは、鞄をつかむとバタバタと教室を走り出ていった。 目を上げると、教室の隅で花瓶の花がしおれかけているのが見えた。 「水、替えとこうかな」と私はつぶやいた。
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