朝焼け 

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翌朝、ひどい低血圧の私が、珍しくまともな時間に学校についた。 悪気はないけれど、朝はどうしても目を覚ますことができない。 目覚まし時計が鳴り、半分ねぼけながらスイッチを止め、 十分後に再びアラームが鳴り響くが、それも止め、 再び熟睡しかけたところを母に蹴飛ばされ、朝はやってくる。 部屋は東を向いているので、朝日は関係ないようだ。 人生は常に困難だ。 かきこむように朝ごはんを食べ、 戦隊物のヒーローが変身するようなスピードで制服に着替えた。 セーラー服に緑のリボン。 あまり上手に結べないが、この取り合わせは気に入っている。 泥で薄汚れたニューバランスのスニーカーを履くと、全力で走り出した。 スポーツバッグがカタカタ鳴っていた。 そんな毎日を平和に送っていた私が、たまたま、まぐれで朝早くに目を覚まし、ゆっくりと朝ごはんを食べ、リボンを丁寧に結んで学校まで歩いていった。 教室に入ると、たくさんの女子が部屋の隅に集まっていた。 私に気付いてちらっとこちらを見ると 「渡辺さんも、こっちに来て。」木村さんが私に声をかけた。 木村さんはクラスのボス女子だ。肩にかかる真っ直ぐな髪と細い目のせいで、ハニワに似ていると思っていたけど、口が裂けてもそんなことは言えない。 ライターで焼いてわざと短めに結んだ制服のリボンや、膝上まで短くしたスカート丈が、スクールカースト上位の人間だとアピールしているようだった。 「何?」私は彼女たちの輪の一番外に混じった。 「私たち、今日から、金岡さんとは話さないことにしたから。渡辺さんもそうして」かなり高圧的に言われて私は混乱した。 「なんで?」 「むかつくから」 「どこが?」 「陸上で優勝したからっていばっているし、ちょっと顔が可愛いからって調子のりすぎ」 「そう思うからそう見えるだけで、そう思わなければそう見えないんじゃない?」 木村さんは、私を軽蔑した目つきで眺めて、 「みんなだってそう思うわよね」と自信たっぷりに顎をあげた。 そうかな? 人生は困難だ。
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