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巻末付録 『渡辺綱を訪ねて』下
さて、いよいよ、綱の来歴である。
まぁ、めっちゃ簡単に言うと…
綱のおじいちゃん、源仕(つこう)さんが武蔵野国で武功を立てて住み着く
↓
綱の実父、源宛(あつる)が綱を育てるも21歳の若さで亡くなってしまう
↓
綱、満仲の娘婿の養子となり、大阪へ。渡辺という土地に住んだことから渡辺という名字、渡辺氏の祖となる。
余談として、渡辺氏は名字だけでも渡辺、渡邉、渡邊、と30種類あるそう。
「もし、宛が死ななかったら活躍もしなかったし、有名になることもなかったでしょうね」
そう聞くと歴史とは、運命とはわからないものである。
また、
「一族は皆、渡辺って名字に誇りを持っていますよ。鬼を退治した英雄の末裔ですからね」
とも…。なんだろ、ちょっとカッコいいぞ!渡辺って人を見る目が変わりそうだ!
そう言えば。綱は何処で生まれたのか、という疑問がこの時、脳裏をよぎった。
序盤でも述べたが、綱の生まれ故郷には二つの説がある。
1 東京都港区
2 埼玉県鴻巣市
綱の生誕の地は武蔵野国、つまりは埼玉県から東京都、神奈川県のちょっとを含めた場所。そこの「みた」と書かれているのみ。つまりはどちらとも取れる。一体、どっちなのだろうか。
これに対し、住職さんはこう答えた。
「私はね。どっちも正しいと思いますよ。歴史なんてものは後から色々出てきて、その度に書き換えられてくものですから。
でも…強いて言うなら、強いて言うならですよ?やっぱここ(埼玉県)かな」
と言いますと?
「これはあくまでも自分の想像、意見になりますがね、東京の『みた』は綱の生まれた時代、海だったはずです。何故なら、江戸(東京)は家康が開墾するまでは海か湿地帯がほとんどだったから。ましてや港区でしょ?あそこは海沿いですから、海の可能性が高い。平安時代にまだ開墾されてる可能性が低い以上、あそこで生まれた可能性は低いと睨んでいます」
なるほど…
ここからは住職さんの考察のちょっとした付け足しになるが、もしかしたら、東京の方の「みた」は同じ「みた」であるが故に、後世の人が作り出した場所なのかもしれない。そうじゃないと、自分が実際に行った當光寺さんが言い伝えだけのはずがないもの。確かに産湯井戸があった(しかし、今はあそこはオーストラリア大使館)みたいだが、産湯井戸は付け足しだ。井戸なぞ作ろうと思えばいくらでも作れるから、と。
因みに、俺個人はというと…
『埼玉県で生まれて晩年は東京都で過ごしたんじゃないかな』
と。
実は東京の方の説にはプラスで「東京(みた)で生まれて晩年も東京(みた)で暮らした」という伝承があり、そちらも考察に含めるとこっちの方がしっくりくる。いくら港区が海か海沿いの場所だったとしても、老いてからならそこで暮らすことは可能だから。
しかしながら、綱の説はまだまだあるようで、兵庫県にある綱の墓、綱が住んでいた場所に建てられた神社など、まだまだ考察の余地はありそう…
あれ…これ書いてて思ったんだが、綱の墓と呼ばれる場所が兵庫県にある以上、
『埼玉県で生まれて兵庫県で死んだ』
という説もあるんじゃ…
自分もまだまだ勉強不足である。
「そうそう、2025年に渡辺綱生誕1000年を記念してフェスティバルというんですか?渡辺一族を集めて催し物を開催する予定なので、もし、良ければ来てくださいな」
大分先の話だね。ってか、
綱ちゃんフェスティバル…!!
ヤバイな、その言葉を聞いた途端、自作のキャラでどんちゃん騒ぎしてる妄想が脳内を駆け巡った!!
皆大好き(と信じるよ!?)綱ちゃんが主役の綱フェスティバル…ヤバい、見たい!参加したい!!
だが、果たしてその年まで自分は東京に住んでいるんだろうか、地元に帰っているんじゃなかろうか。しかし、このフェスティバルには参加したいぞ…そうか、帰ってたら帰ってたでまた来れば良いか。その時までこの事を胸に刻んでおこう。
こうして、綱を訪ねる旅は終わった。
いざ、終わってみると、こんな事ならもっと早めに訪ねるべきだったという思いと、綱という人物の生きた証を見つめる素晴らしい時間になった。
しかし、やはりは生誕説が大きい。一体、どっちで生まれてどう育ち、今日の活躍、伝説を産むことになったのか。しかし、それこそ住職さんの言うとおり、
『歴史なぞいくらでも作れる』
から。
でも、それ故に、ロマンがある。歴史モノの創作活動に『正解』など無いし、それこそ『いくらでも作れるから』。
最期の最期に、今回訪れた宝持寺の、綱の位牌に刻まれた綱の辞世の句を記して締めたいと思う。
『世を経ても 分けこし草の ゆかりあらば 跡をたずねよ むさし野の原』
追伸。本当なら兵庫県とか大阪府とか行かなきゃならないんだろうけど…金が無いから行けず、あくまでも都内近郊の史跡を訪ねるのが精一杯でした。
ますます調査不足に拍車がかかった形で申し訳ありません。
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