いっしょにごはん、たべたくない

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 わたしは、ご飯が大好きだ。  作るのも、食べるのも、大好きだ。  書店でレシピ本を眺めてる時の気持ちはふわふわで、スーパーで買い物をしている時はわくわくで、台所で包丁を握っている際にはどきどきする。  味付けの瞬間は、ちちんぷいぷいの時間だ。  魔法の杖を振って、自分の脳味噌を取り出す作業を夢中にやる。  塩、こしょう、醤油、みりん、酒、めんつゆ……。  濃い目の味付け、薄目の味付け。  入れすぎ、足りなさすぎ。  計量スプーンできっちりはかる派か、目分量でどばどば入れる派か。  ……全ての作業にその人の個性が丸見えだ。  普段のその人の考え方が、まるっと見えている。  だから、ちちんぷいぷいの、脳味噌を取り出す魔法の時間になるのだ。  わたしは、ご飯が大好きだ。  作るのも、食べるのも、大好きだ。  他の人とご飯を作るのも、その人のちちんぷいぷいを見るのも、その人の料理を食べるのも、逆にわたしのちちんぷいぷいを見てもらうのも、わたしの料理を食べてもらうのも……全部好き。  好き、好き、大好き! 本当に好き。  だからこそ……。
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