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本来なら元のフォルポス族の姿に戻って戦うべきだ。それはわかっている。
しかし、込みあがるアイデアと溢れ出る魔力がオレの好奇心をどんどんと押し上げていう事を聞かなかった。
そしてもう一つ…!
この魔法技巧に長けた姿になってから気が付いた、ルージュの持つ秘められた性質にも興味が尽きなかった。
頭に浮かぶ全てを実現させることは不可能だ。ならば一つ一つ消化していくしかない。その為にはいずれにしても下準備が必要だ。
オレは魔力を込めた左手を思いきり横に薙ぐと、炎で象った無数の鳥を飛ばした。魔法を自分のイメージ通りの形に仕立てる「具象」という技巧だ。魔法が得意な奴に言わせてみれば慣れれば簡単にできるらしいが、フォルポス族のオレは五年以上練習してもついにできなかった。
焔鳥たちは未だに舞い上がる噴煙の中に躊躇なく飛び込んでいく。すると炎の熱気で生まれた気流の流れがどんどんと煙を啄んでいく。するとすぐにベヘンの姿が露わになった。
近中距離の戦闘を主にするベヘンは噴煙で視界が遮られてしまい、攻めあぐねいていたようだ。オレも普段は至近距離での戦闘を主軸にしている。だから奴の考えている事や、不安に思う事はよく分かった。
ベヘンの姿が見えた事でオレは再び魔法を操り、焔鳥たちを攻撃に転じさせた。キィキィという独特の泣き声が響く。尤もそんな陳腐な攻撃は槍の乱打によって悉く撃ち落とされてしまったが。
互いに互いの位置関係を確かめ合う。オレに遠距離の攻撃手段があると見せた以上、ベヘンの取る選択肢は一つだけ。すなわち有無を言わせぬうちに近づき、距離間でのアドバンテージをオレから奪う事だ。案の定、奴は考えるよりも早く槍を構えその刀身と同じくらい鋭く間合いを詰めてきた。
オレはルージュを触媒に魔法を一つ発動させた。途端に炎が刃を中心に渦巻き、その先は蛇の頭へと変じた。その蛇を鞭にして振るう。先程よりも距離が短く、突如として剣が鞭に変わったことには流石のベヘンも意表を突かれた様だった。
双方の牽制がせめぎ合っていたが、ほんの五秒も経たないうちに形勢は動いた。
オレはベヘンの脇腹に鞭を一撃入れることに成功し、ベヘンは一撃を貰いつつも鞭の波を避け自分の槍の間合いへと進むことが叶った。正にお互いにとって致命的な変化だった。鞭の扱いに慣れていないせいで、目算では奴の突きだす槍の方が先にオレの腹を貫くだろう。
だからもう一度、ベヘンの意表突くために魔法を使っておいたのだ。
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