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(これは…一体?)
柄からルージュの驚きが伝わってきた。意外なことにルージュは自分の持っている剣そのものの性質に気が付いていなかったようだ。
オレは残心をしつつ、ルージュに疑問の答えを教えた。
(ああ。お前は魔力の性質を逆転させる能力を持っているんだ。だからオレの火の魔法が逆転して結果として氷結の魔法と同じようなことになった)
(いつから…いや、そもそもどうやって気が付いたのだ? 私自身が知り得ない能力だぞ。それに反転の技巧まで……)
(それは、オレもよく分からない)
(何…?)
(ただ漠然とできって確信だけが頭の中に強く出ていたんだ)
これは本心だ。ベヘンの炎の矢に襲われた瞬間から、今に至るまでの全ての技が反射的に使えてしまっているの唯一の事実だった。こうなると一つ信憑性の高い仮説が頭の中に思い浮かんだ。
この魔族の姿は基礎体力や剣の腕前が幾分か落ちる代わりに、魔術師としては高い素養を有しているのはないか。それこそ「反転」という世界に何人かができる技巧を容易く使いこなし、ルージュ自身が気が付いていなかった魔剣としての能力を発動できるほどに魔道具に無意識レベルで精通するほどに。
現段階ではそうとしか考えられない。
そして、その仮説がもし本当だとすればオレは一戦士としてとてつもないアドバンテージを得た事になるのではないか?
剣の技と近距離のでの戦闘が必要な時はフォルポスの姿を取り、魔術や遠距離間での戦いが求められる状況では魔族の姿を取ればいい。どんな条件でもオールマイティに戦える戦士としての究極系の一つと言えなくもない。
しかもオレにはもう一つ。狼としての姿も与えられている。確かめた訳ではないから断言はできないものの、フォルポス族とも魔族とも違う別の力が宿っているように思えてならない。
そう思うとオレはふつふつと心が燃え始めた事に気が付いた。どんな能力であれ、自分にプラスとなるのなら大歓迎だ。強くなれることに、そして戦いの幅を広げられることに喜びを感じない戦士などいる訳がない。
もう正体がばれるとか、余計な事を考えずに姿を変えてできる事とできない事の検証をしたかった。その逸る気持ちをどこまで抑えられるか、自分に自信がない。
(そうであれば、さっさと敵を切り捨てるしかあるまい)
(ああ! あいつらを助けて、とっとと地上に出るぞ!)
思うが早いか、オレはみなが未だ戦っている敵に向かって駆けていった。ベヘンとの戦いの中では試しきれなかった事がまだまだ残っている。あいつらとの連携のついでに是が非でもやってみたかった。
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