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結果としてオレ達は予想よりも早く、ジェルデ率いる反乱軍の末尾に追いつくことができた。案の定、魔族側の自警団と思しき集団と戦闘を繰り広げている。
ルーノズアの自警団の屯所は大きく分けて三カ所ある。南北にある町の出入り口、そして港だ。魔族が乗っ取った後も、街の建物の位置や構造が変わるわけではなかったので、魔族の自警団もそっくりそのまま拠点として利用していたらしい。なので港を目指し、船を奪う事を目的とした反乱軍のかち合ってしまうのは必然だった。
だが数十人の自警団に対して、こちらは五百以上の人数がいる。如何に魔族といえども簡単に覆せる人数差ではない。敵側の数が少ない気もするが、それも考えてみれば当然だ。彼らの敵は通常、少数レベルで街中に発生する犯罪者か、もしく外側からやってくるもの。見張りが察知して、召集の後に防衛に専念できるならいざ知らず、街の中から数百もの敵が出てくることを想定していたとしたら、こちらに勝ち目はない。
戦況は押しているとは言え、余裕がある訳ではない。数は多けれど、半分以上は禄に戦闘経験もない町民であるし、騒ぎが伝達すれば援軍がやってきて前後からの挟み撃ちを許してしまう。
どちらにせよ、船を奪えるか否か。それが戦局の決定打となることは間違いない。
しかし、人が多すぎて先頭の様子を伺う事もできない。このまま後方支援に回ってもいいが、少なくともジェルデかトマスのどちらかとは合流したいのが本音だ。
「仕方がない。路地から迂回するぞ」
「わかった!」
オレ達は人だかりから右に逸れ、路地へと回った。そこも逃げ惑ったり、様子を伺ったりする魔族の姿があったが、幸いにして今はオレが魔族の姿をしていたおかげで自然に溶け込むことができた。
「殺す必要はないが、武器を持っている奴らは牽制だけしておこう。厄介事は少しでも減らしておくべきだからな」
雑踏の中で返事は聞こえなかったが、全員が武器を構えたのは気配で伝わってきた。それからは道中で武器らしきものを持っている奴らには武器折りを試みたり、腕や腿に攻撃を加えて最小限で戦闘不能へと追い込んでいく。ここに住んでいる魔族たちがどのように洗脳を受けているかは知らないが、腐っても魔族というべきか血気盛んで血の気の多いような奴らが多いのは事実だった。
長引くと魔族と『囲む大地の者』という種族のポテンシャルの問題で形勢逆転してしまうかも知れない、と漠然と予感めいた考えが浮かんでくる。焦りこそしないが、オレは思わず足を急かしていた。
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