飛び出し注意

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飛び出し注意

 昨今の日本は若者の人口が減り、高齢者の人口が増えている。それを高齢社会というのだと社会科の授業で知った。  わたしの住んでいる地域でも、その変化は目に見えている。  もみじマークをつけた車が多く走っていて、ドライバーのおじいちゃんが八十歳を超えているなんていることはふつうのことだ。  おじいちゃん、おばあちゃんたちは元気だ。  病院の待合室で、昔馴染みと出会っては楽しそうに昔話をしている。  動作は少しゆっくりだけど、杖をつかずにしゃんっとして歩いていたりする。  わたしの通う児童クラブのグラウンドの道を挟んだ反対側ににパークゴルフ場もあって、そこではわたしたち子供たちの声以上に高齢者の歓声が響いていたりする。うちの七十を超えるおばあちゃんも、よくパークゴルフに参加しに車を運転していっている。  そんな状態では児童クラブのわたしたちも負けていられない。グラウンドでサッカーの練習をしたり、バトミントンをしたり、楽しみ方はたくさんある。パークゴルフ場の歓声に負けないようにみんなそれぞれ楽しんでいる。  わたしもバトミントンクラブの自主練習を兼ねて友達とバトミントンをするのが日課になっていた。  でもそこで問題になるのは、学童クラブのフェンスが低いことだった。時たまボールやシャトルが飛び越えていってしまう。  ひとつのことに夢中になると子供はよく周りがみえなくなると言われるけれど……。  だから児童クラブの横には子供飛び出し注意の看板が掲げられている。  だけど良く良く考えると、ひとつのことに夢中になると周りがみえなくなるのは、なにもわたしたちだけじゃない。 「ゆみ、帰るわよ!」  向かいのパークゴルフ場から、おばあちゃんが飛び出してくる。  こうやって孫と連れ立って帰るのが、日課になっているおじいちゃんやおばあちゃんたちも多い。  そしてそこへ偶然通り掛かった車が、クラクションを鳴らす。 「飛び出したらあぶねぇぞ!」  車の運転手からは注意が飛ぶ。でも耳が遠いおばあちゃんは聞こえていないのか、気にした素振りを見せない。  だからなのか、子供飛び出し注意の看板の隣には、それよりも大きな字で書かれている言葉がある。  老人飛び出し注意!
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