マイム・マイム

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「黒いストレートの髪を一つに束ねた女に、童顔で切れ長の目をした女、か…。」    自分の提供した女性らの特徴を彼はぽつりぽつりとつぶやいていく。  その時だ。 「あ、そういえば」 「お?どうした。何か覚えが…?」 「いや、それが、その…。」 「なんだよ、はっきり言ってくれないか。」  何かを思い出した様子の相手に、少しの期待感を持つも、なんだか歯切れが悪い。数秒の沈黙の後、急に顔つきを変えて、彼はゆっくりと言葉を紡ぎ出した。 「いいか、今からする話は、昔君が僕に他言するなと、ご立派に固く口留めしてくれた話なんだ。まあ、確かに他言しようにもt体力のいる話だ。僕もしばらくは忘れてたんだ。しかしその君が思い出せないのが不思議なことだが。ただ、こういった出先で話すにはあまりにも込み入りすぎた話でもあってね。」  向こうが雰囲気を急に変えてきたことは地味に癪に障ったが、そんな話があったかと、自分の記憶へと意識を集中する。  固く口留めしたというのだから、何か後ろめたいことなのか、しかも外で話せないというのだから、相当なことなのか。というか、今までの私の話と何の関わりがあるのかぐらいは言ってくれても良いものを。文脈がなっていないのもまた、少し癪に障った。 「もし、君が良ければなんだが、僕と二人だけになれる場所、君の部屋なんかでも構わない。とにかくそういうところで話をさせてはくれないだろうか。」
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