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「これは、君と僕が高校2年生に上がったころのことだ。ほら、なんだか君、急に絵の練習をし始めたことがあったろう。その時分のことさ。
しかもそれが二か月と立たないうちにみるみる上達するんだよ、正直気味が悪かったがね。
特に君の描く人物画は絶品でね。君の画風はなんとも現代的で優美というか、アンニュイな美しさに振り切ったような感じだったから、人物画との相性がよかったのかもしれないがね。
技法なり色合いなり、素人目にはなんのこっちゃわからなかったが、とにかく綺麗だったのは確かさ。
だから、途中で君が絵の題材を定めてしまうまで、君の描く様々な人物を見れたのは、今思えばある種の幸運ってやつかもしれないな。
―どうやらこの部屋の様子を見るに今は描いていないようだけどね。もう充分、というところかい?」
こちらの反応をうかがっている様子の彼と急に目線があったところで、現実に引き戻される。
自分の話でありながら、なかなか思い出せないものを、彼の言葉から何とか思い出そうというのだ。思っていたよりも必死で聞いていたようだ。
それに、うっすらと何かを掴みかけた感じがする。
そうだ、今日の女性たちは私の絵と確かに何か関係がある気がする。
今描いていない理由も、多分、そこに…
「まあ、兎も角今はこちらの話が先だ。聞き漏らしてくれるなよ。本題はここからなのだから。」
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