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「辛いことを思い出させたのなら、悪かった。しかし、このことは今回の話に関して重要な要素でもあるんだ。だから、僕の続きを聞いてほしい。
それで、絵の話に戻すんだが、君が絵を描き始め、人物画を描き始め、最後には同じ絵、というか同じ題材の絵を何枚も描くようになったんだ。
そう、妹のまさきさんの絵だ。」
―そうだ、妹を亡くしてからというもの、彼女の浅はかさに呆れ、止めきれなかったことを悔やみ、助けても間に合わなかった記憶に日々苦しめられた。
だが、何を考えていても、結局最後に心を占領するのは決まって寂しさだった。初めの内は、とりあえず彼女の写真を探しては飾って置くことで、心の隙間を埋めようとしたものだった。
しかし、その内にやりきれなさが心を侵食し始め、
なんとも突飛な発想だとは思ったが、絵にして彼女をこの世に焼き付けてやろうという考えに至ったのだ。
そうして、絵の勉強から始めて、朝から晩まで、彼女の絵が満足に描けるようにと筆を持ち続けたのだ。
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