君の話を聴かせてよ。

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どれにしようかなー、と悩み始めて、もうかれこれ十数分は経っていたと思う。いや、大袈裟かな。五分くらいかも。でも、 私がショーケースを見つめ始めてから今までに、もう四組の人達がケーキを決めて支払いを済ませ、店を出ていった。 「バスクは捨てられない…。でも、レアも好きだしなぁ…。うーん、」 傍で静かに待ってくれていた慧くんは、そこでやっと、くすりと笑った。 「じゃあ、バスクにしたら?で、俺、レアチーズケーキ買うよ。半分こしよ?」 「えっ!良いの?!」 私はぱっと表情を明るくさせて、輝く目で彼を見た。スラリと細長い長身の彼は、やはり、スラリと長い腕を伸ばして、人差し指でショーケースをコツンと指差した。 「すみませーん。バスクチーズケーキと、レアチーズケーキを一つずつ下さい」 はぁい!とアルバイトかなと思う若い店員さんがやって来て、ケーキをトレイに取りながら、チラチラと彼を見ている。 分かる。慧くん、めっちゃかっこいいもんね。そりゃ、見ちゃうよね。 色が白くて、中性的な顔立ちの彼は、そんなことにはまるで興味無いようで、涼しい顔を崩さない。私までうっとりとその横顔を眺めている間に、さらりとお会計を済ませてしまう。 「あっ!お金…!」 「いいよ。おごらせて」 彼氏でしょ?と言われると、じわりと嬉しさやこそばゆさが広がって、「…ありがとう」とむずむずとしながら素直にその好意を受け取ることにした。 私の彼氏は、かっこいい。 そこら辺の、アイドルなんかよりも。 モデルみたい。 だけどモデルじゃない、と言うことが逆にブランド感を引き立たせているようで、より特別だと感じてしまう。 私は、胸を張りたいような、隣に立つなんて烏滸がましいような…、いつもどんな顔をして傍に居たらいいんだろう?とふと、考えてしまう。けど、結局いつも並んで歩いたら直ぐにそんなこと忘れてしまう。 「カコちゃん、本当にチーズケーキ好きだね」 「えへへー!うん!今日は、課題が終わったお祝いなのだー!」 ニコニコと笑う私を見て、慧くんはいつだって微笑んでくれる。柔らかい笑い方で。私はその顔を見て、いつも一層ニコニコと笑ってしまう。 自然と繋いだ手が、不安なんて忘れさせてしまう。 私は慧くんが大好きで、慧くんも私が好きだと言うことは、揺るぎ無いことなんだと確信を持って思う。
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