第4話 相楽木久遠

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 事前に眞津藻瑠々の自宅への行き方は調べていた。冬凪の住んでる地域からは結構離れているので電車をいくつか乗り継がなければならない。学校が終わるとそのままの格好で向かった。  下調べはしていても初めて行く場所だったので若干迷ったりもしつつ、結局、片道1時間少々かかってしまったが無事に辿り着いた。当然と言えば当然だが、いかにも高級マンションといった風貌の建物が冬凪の目の前にそびえ立っていた。  眞津藻瑠々が丁度出てきたりしないかと淡い期待をしながら少し様子を見てみてるがそう上手くはいかない。やはり自分から進むしかないかと入口まで向かう。  売れっ子女優はこんな立派な家に住めるのかと思いながらも中に入ると、インターホンがついた自動ドアが設置されていてこれ以上は入れないようになっていた。お金持ちや有名人が住むような家ということで、セキュリティ抜群のオートロックだ。  部屋番号も教えてもらっていたので、インターホンに部屋番号を入力する。深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、呼び出しボタンを押した。 『はい』  2,3秒の後、インターホンから女性の声が聞こえた。声だけでは眞津藻瑠々なのかどうかはなんとも判断できない。 「突然すいません、眞津藻さん……ですか?」 『そうですけど、どちら様ですか?』  声だけでも分かるほど、相当警戒し怪しんでいる様子だ。 「貞目冬凪と言います。ある方から住所を教えてもらいまして……どうしてもお話ししたくて来ました」 『何者? 誰から教えてもらったの?』 「ダイパレの久遠です」  脳内で何度も会話のシミュレーションをしていたが、ほぼその通りに事が運んでいる。普通に話すだけでは門前払いで会うことはできないだろうと思っていた。しかし、ダイパレの久遠という、眞津藻瑠々にとってみれば本当に住所を教えた相手なので一気にこちらの関心を引けるのではないかと考えていた。 『……芸能関係の方?』 「いえ、ただの一般人で高校生です」 『他にもだれかいるの?』 「私一人です」 『わかった。自動ドア開けるから中に入って。応接用のソファーが置いてあるからそこで座ってて。いま行くから』  作戦通りに上手くいった。家まで入れれば一番良かったけどさすがにそこは警戒されているらしい。  自動ドアを通ると広いロビーがあり、応接の椅子とテーブルがいくつか置いてあった。仕事の打ち合わせ等でここの住人が使うのであろう。建物の見た目も凄ければ中も充実していて凄い。  言われた通りに座って待っているとエレベーターが一階に停まりドアが開く。  眞津藻瑠々がエレベーターから出てきた。透き通るような白い肌、艷やかな黒髪のショートヘア。小柄だがスタイルも良い。ネットで掲載されている画像よりも生の本人の方がさらに可愛いと冬凪はその時思った。 「本当にあなた一人なの?」 「もちろんです。突然なのに会ってくれてありがとうございます」  若干周囲に警戒した様子を見せながらも、眞津藻瑠々は冬凪へと近付き声をかける。冬凪は椅子から立ち上がり深々と頭を下げた。
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