第5話 好意と言う名の

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第5話 好意と言う名の

 冬凪と眞津藻瑠々が話した次の日の午前中には、眞津藻瑠々の動画がSNSで拡散していた。もちろんダイパレに対して謝罪している内容である。  眞津藻瑠々は動画の中で、ダイパレの人気に嫉妬して人気アイドルを陥れるために事務所抜きにして個人的に行いました、ということで謝罪していた。どのような処分もすべて受け入れ、チャンスがあるなら気持ちを入れ替えて芸能活動を続けていきたいということでその動画は終わっていた。  女性アイドル同士なら秘密裏にあってもおかしくないと思うが、女優の扱いである眞津藻瑠々が男性アイドルにわざわざリスクのあることを行うという理由はなかなか無理があると思われるが、そんなことを感じさせないぐらいに説得力のある、本気で謝罪しているであろうその動画は何故か評価された。  彼女を責める意見ももちろんあり、一部CM降板などはあったが、動画の影響による被害は案外多くはなかった。彼女が言っていたように本当にこの騒動は下火になっていった。  その動画が公開された後、ナラムからのメッセージが冬凪へ届いた。 『久遠から色々聞いた。俺のために動いてくれたみたいでありがとう。なんてお礼を言ったらいいか……』 『私も前に助けられたしお互い様だよ! また無事に活動できるようになってよかった』 『この騒動で一時ストップしてた仕事もまた動き出して逆に忙しくなって……最近あまりゲームもできなくて本当にごめん』 『ゲームなんて時間ある時でいいし。お仕事頑張って!』  そんなやりとりをしながら、眞津藻瑠々との会話を思い出す。自分はナラムのことが異性として好きなのだろうか。  カッコ良くて人気アイドルであるナラムと自分では釣り合うわけがなく、そもそもナラムがわざわざ自分を選ぶなんてことがあるわけがないと思い込んでいたため、好きかどうかということは自分の中で考える余地はなかった。ただ仲良くなれたらいいなというぐらいにしか思っていなかった。  眞津藻瑠々に言われたことで、冬凪は異性としてナラムのことは好きなのではないかと思い始めた。しかし自分の気持ちながら確信はもてない。微妙にもやもやした感じになってしまった。(まあ……でも今のままで充分楽しいしなぁ……)  ナラムは当然としてさすがの久遠もここ数日はゲームをしておらず。久しぶりに何もない平穏な日常が続いていたが、そんなある日、眞津藻瑠々から冬凪のもとへメッセージが入った。  『動画見た!? そろそろ世間からはだいぶ忘れられたと思うので、最後にダイパレに直接謝りたいんだけど……お願い! 2人に連絡とってくれる?』 『さすが女優さんって感じの動画だったよ! 直接って、会って謝るってこと?』 『そう! 会って謝罪しないと誠意が伝わらないと思うから……』  もちろんそれは間違いないが、忙しいダイパレと、同じく忙しいであろう眞津藻瑠々が同時に揃うなんて丁度良いタイミングあるのだろうか。  頼まれた以上何もしないわけにはいかないので、まずは直接被害を被ったナラムへ聞いてみることにする。メッセージ画面を開き、色々考えながら入力するが長文になりいまいちまとまらない。  結局少し迷ったが電話で伝えることにした。
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