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「あの日……眞津藻さんに話しをつけに行った日、最初は彼女、敵対心むき出しだったんだけど話してる内に仲良くなって、結局友達になったんだよね」
軽く頷きながらナラムは黙って聞いていた。
「そしてついさっき、ダイパレに……ナラムと久遠に直接会って謝罪したいということで彼女から連絡があって。全然悪い人じゃなかったし、友達にもなったので……まずはナラムに聞くだけ聞いてみようと思ったのが相談内容です」
「なるほどね」
そう言うとナラムは腕を組み、壁や天井を見たり俯いたり、何か考える素振を見せた。と、何か思いついたのか顔を上げ真っ直ぐに冬凪を見つめがら応えた。
「もちろん会うことは大丈夫だけど、そんなに気は使わなくていいよって彼女に伝えておいて。あと、それでも直接謝罪したい、となっても久遠はわざわざ来ないんじゃないかなぁ。多分今回の騒動はほんとに何も気にしてないと思うし、面倒だからお前に任せるって言われそう」
ゆっくりゲームできるからむしろよかったというように言っていたぐらいだし、たしかにナラムの言う通りだなと思った。
「それを踏まえた上で、どうしても謝罪したいっていうなら俺はいいよ。ただし、なんであんなことをしたのかっていう本当の理由を教えてくれるなら、って伝えておいて!」
「うん、わかった! それで伝えておく!」
ナラムが眞津藻瑠々のことを嫌っていないことがわかり冬凪は安堵した。そして返事をしたところで、ちょうど家の玄関ドアが閉まる音がした。
「あ、妹が帰ってきたかな」
「妹さんいたんだ」
「そうそう、2人姉妹なんだ」
「男連れ込んでて家的には大丈夫なの?」
「誰か来てることなんて気が付かないですぐに出かけるはずだから問題ないよ」
「いやでも玄関に俺の靴あるし」
そう言えばそうだ。こういうことが今までなかったし、ナラムに会えるということで少し舞い上がっていて靴を隠すことなどまったく気付きもしなかった。別に男を連れ込んでて怒られるような厳しい家庭ではないが、誰だとかそういう話になるのは面倒くさい。(そして面倒くさいことはなるべく避けたい……!)
しかしそうこうしているうちに2階に上がってくる足音が聞こえてきた。
「お姉ちゃんー? 誰か来てるの? もしかして彼氏!?」
秋葉が冬凪の部屋の前から話しかけてきた。
「違う違う! 友達!」
「ほんとかなー? お母さんには内緒にしてあげるから。ドアあけていい?」
冬凪が返事をする前に部屋のノブが回りゆっくりとドアが開き始めた。
「ちょっと! 勝手に……!」
「こんにちはー!」
中を覗きこむと同時に元気に挨拶をしてきた秋葉とナラムの目が合うのを冬凪は確認した。ナラムは当然すでに変装は解いており私服姿である。ダイパレファンの秋葉ならば速攻で気付いてしまうだろう。
どんな反応をするのかと身構えていると、冬凪の予想に反してまったく身動きすることなく、ドアをあけた時の状態のままその場で固まっていた。
「おーい……秋葉?」
冬凪が声をかけるがそれでも応答はなかった。
「お邪魔してます! ご存知かもしれませんが、ダイパレの那谷來夢と申します」
続いてナラムが声をかけたところでやっと秋葉の停まっていた時間が動き出した。
「えええええ!! うそでしょ!? え……え……なんでどうしてなんで!!」
初めてみるほどに錯乱した秋葉の様子に、落ち着くまで少し時間がかかるなと冬凪は思った。
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