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「取り乱してしまいすみませんでした! 本物ということは納得しました。でもお姉ちゃん、ダイパレのこと興味なかったし……どこで知り合ったんですか!?」
少し時間が経ち、やっと落ち着きを取り戻した秋葉が、ナラムと冬凪の顔を交互に見ながら質問を投げかける。
「元々オンラインゲーム上で知り合って一年近くゲーム内だけの友達だったけど、最近オフ会で初めて顔を合わせてから会うようになったかな」
ナラムが笑顔で答える。
「えっ、すごい! そんなことってありますか? 運命じゃないですか!?」
秋葉はそれを聞いて目を輝かせた。
「それにしてもこんな狭い我が家に來夢様がいるなんて! こんな夢みたいなこと夢でも見ないよ!」
「來夢様は恥ずかしいかな……普通に那谷さんとかでいいよ」
「いえ、そんなの無理です! 來夢様と呼ばせて下さい!」
気恥ずかしそうにしている來夢の要望は秋葉にはまったく届かなかった。
いつも元気で明るく、物事ははっきりと言う性格の秋葉ではあるが、一度気持ちが落ち着いてしまえばナラムの前でも変わらない様子なのは本当に凄いなと冬凪は思った。
「聞いていいのか……あれなんですけど……」
突然秋葉の声が小さくなり、真面目な表情になる。珍しく言いづらそうな、迷っている表情をしていた。
「お二人は……お、おお、お……お付き合い……してるんですか……?」
突然の質問に冬凪の方が真っ先に反応した。
「いきなり何てこと言い出すの!? 來夢さんに失礼でしょ!」
ナラムもそれに続いて答えた。
「あはは、お友達として良い関係を築いてるよ」
「なんだーお姉ちゃんと來夢様が付き合ってて結婚すれば、お兄様って呼べるのにー」
秋葉は残念な表情を見せた。
同時に冬凪も何か少し気持ちが下がる思いがした。ナラムの回答は当然わかっていたことだが、それでも特に躊躇いなく即答したことが寂しくも感じた。(私ってナラムに何を求めてるんだろ……)
「そうだ! サイン欲しいです! お願いできますか?」
「全然いいよ。名前も書いてあげるね」
仲良く話してる2人を見ながらも、その後冬凪の気分が晴れることはなかった。
「是非また来てくださいねー!」
「気を付けてね」
「今日はとても楽しかったよ。2人ともありがとうね。また!」
笑顔で手を振りながらナラムは玄関ドアから出て行った。
「いやー、來夢様ってテレビで見てるイメージと同じだね! めちゃくちゃ良い人!」
「ねっ、オフ会で知り合ってゲーム友達のままならわかるけど、なんでこんなに会ってくれて、仲良くしてくれるのかが全然分からないんだよね」
「なるほど……あれだけ有名人なら普通の友達っていうのも作りずらいだろうから、ダイパレのファンじゃなかったお姉ちゃんが遊ぶのにちょうどいいとか? もしくは……」
「もしくは……?」
秋葉がニヤニヤしながらからかうような素振りで言った。
「來夢様、実はお姉ちゃんに惚れてるとか?」
「いや、絶対ない! そんなのあるわけない!」
「絶対ないってこともないと思うけどなー。普通に考えれば可能性は薄いけどね!」
もし本当にそうだったら、と考えるがそんなことを考えるだけでも、とてもおこがましい。秋葉の言う通り、ファンじゃなかったから丁度良い存在だったんだなと思うことにした。
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