第5話 好意と言う名の

5/11
前へ
/48ページ
次へ
 その日の夜、早速ナラムから日程に関するメッセージが送られてきた。 『予想外で俺も驚いてるんだけど、一応久遠に聞いてみたら行くって言いだしてさ。日程の調整面倒になって申し訳ない!』  その内容と一緒に2人がフリーな日付と時間が記された内容のものも届いた。1週間以内くらいのスケジュールで、かなり細かく記されている。丸一日フリーという日はないような感じだった。  売れっ子芸能人はホントに休みがないんだなぁと思いながらも、すぐに眞津藻瑠々へ報告と日程確認のためメッセージを送る。返事はすぐに来た。 『久遠も来れるんだね! やったー! 本当にありがとう』  彼女のことだから今頃飛び跳ねて喜んでいるのではないかと、想像するだけで面白くて顔がニヤけてしまう。  幸いにもこの送られてきた一週間分の予定の中で眞津藻瑠々もフリーな時間があり、思っていたよりスムーズに決まったことに冬凪は安堵した。  しかし、やはり気になることがある。あの久遠が何故行きたいと思ったのか、そして眞津藻瑠々に会うときにアイドルスイッチはどうするのか。  部外者の自分が気にしてわざわざ聞くのも変かなと思うが、冬凪なりの心の準備もあるので久遠にメッセージを送ってみることにした。  10分、15分と経っても返事は来ない。仕事かなと一瞬思うが、ナラムからメッセージが来てるし、久遠だけこの時間に仕事があるものなのかと思う。  ふと部屋のパソコンが目に入った。もしかして、と思い電源を入れるといつものゲームへログインする。  冬凪の予想は的中した。ゲーム内、ラキオンはオンライン中の表示になっていた。 【トーナ:おーい。メッセージ送ったんだけど】 【ラキオン:まじ? ちょい待って。今クエスト中だから】  ゲーム内チャットの返事は早い。ブレずにアイドル感のない久遠の反応は何か安心感を感じられる。  結局その後、30分程待ちやっと返事がきた。 【ラキオン:すまんすまん、メッセージ見たよ】 【トーナ:どうするの? 同じ芸能人に素の姿を見せるのはまずいんじゃないの?】 【ラキオン:いや、どうせ眞津藻瑠々は來夢のことが好きなんだろ? それを野次馬したいから行くだけだ。だから素の状態にはならないつもり】  なるほど、普通に考えれば眞津藻瑠々はナラムのことを狙っていると思うだろう。そうじゃないんだよなぁと言いたいところだが、勝手に言うわけにはいかない。  とりあえずアイドルのまま会うということが聞けたので安心した。素の状態はとてもじゃないが眞津藻瑠々には見せられない。せっかくの恋も間違いなく冷めてしまうだろう。一応友達として、それだけは阻止しなければならなかった。  その後もナラムと眞津藻瑠々の二人に相談して、場所は眞津藻瑠々の知り合いが経営している飲食店ということで決まった。  店の名前を検索してみると口コミもほとんど星5のコメントが多く、間違いなく今まで冬凪が一度も行ったことがないような高級店だということに自然と身震いした。(ただの私服はさすがにマズイのかな……どんな格好すればいいんだろう……)
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加