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携帯電話の地図を頼りに初めての街を歩く。夕食時ということで、多くの飲食店があるこの辺りは大勢の人で賑わっていた。
事前に検索して待ち合わせの店の外観を把握していただけあって、遠くからでもすぐに分かった。
近くで見ると高級感溢れる外観にホントに一人で入って良いものかと思う。
服装も悩んだが結局家にあるもので、できる限り大人っぽい感じの服装にはしてみたが、もっときちんとしたものを買えば良かったと冬凪は後悔した。
待ち合わせ時間より15分程早く到着してしまった。一人で店に入るのは心細いのでこのまま外で待っていれば誰か来るかなと思っていると、タイミング良く携帯電話にメッセージ受信のお知らせが届いた。
『もう着いてるよ! 眞津藻で予約してるから!』
確認してみると眞津藻瑠々からのメッセージだ。かなり早く着いてしまったと思ったがそれよりも早いとは流石である。冬凪は覚悟を決めて恐る恐る店のドアを開けた。
「いらっしゃいませ、ご予約のお客様ですか?」
「あ、あの……眞津藻で予約してます……」
店に入るとすぐに近寄ってきた女性店員から声をかけられた。
「あれ? トーナちゃん?」
店の制服ということもあり、また髪型も変わっていたせいで冬凪はすぐに気が付かなかったが、その店員は先程別れたばかりの佐藤小百合であった。
「あ、小百合さん! バイト先ってここだったんですね!」
「凄い偶然! てか、予約の眞津藻さんって芸能人だよね? トーナちゃんがお連れ様?」
「は、はい……今日は招待されまして……。あ、私は紛れもなく一般人ですけど……」
「芸能人と友達って凄いね! そう言えば予約は四人だよね? あと二人って?」
「えぇと……ダイパレの來夢と久遠です」
「えええー!? マジ? てか、何の集まりなの!?」
「いやー話せば長くなるんですが……」
そんなやり取りをしていると、店の入口が開いた。
「ご予約のお客様ですか?」
冬凪と話していた佐藤小百合はすぐに話し方と表情を仕事モードに切り替え、入ってきた二人へと声をかける。
「眞津藻で予約してるはずです……あっ、トーナ!」
店に入ってきた二人はナラムと久遠だった。ナラムがすぐ近くにいる冬凪に気付いて声をかけた。
今日は二人で行動しているせいかそんなに変装もせず、一目でダイパレだとわかってしまうだろう。
「二人とも時間前なのに早いね! 眞津藻さんはもう来てるみたいだよ」
「お揃いですね。お席ご案内致します。こちらへどうぞ」
三人は佐藤小百合について行く。階段を登りさらに長めの廊下を歩いた。
芸能人の接客でも見た目には動揺せずいつも通りといった感じで堂々としている佐藤小百合に冬凪は感激した。
「ねえねえ、さりゅーさみさんって覚えてる?」
冬凪が歩きながら小声でナラムへと話しかけた。
「ん? ああ、そうか。どこかで見たことあると―――」
「こちらで眞津藻様がお待ちです」
ナラムがセリフを言い終わる前に眞津藻瑠々が待つ個室へと着いた。
そう言えば久遠がここに来てから一言も喋っていないなと気になりながらも、何事もなく無事に終わりますようにと冬凪が先頭でドアを開けた。
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