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最初の乾杯が済むと、その後は次々と料理が運ばれてきた。
テレビでしか見たことがないような如何にも高級そうな食材に、冬凪はひたすら感激しっぱなしである。
「三人同じゲームやってるって、共通の趣味があっていいなー。ゲームとかやったことないけど私もやってみたい!」
久遠は相変わらず話しに加わっていないが、三人で休みの日の話しをしていると、眞津藻瑠々が思い出したかのように羨ましそうに言いだした。
「パソコンのゲームだから、まずはプレイ環境を整えないといけないんだよね」
「へー! 全然詳しくないからゲームをやるところまで辿り着けなさそう」
笑いながらそう言うと、眞津藻瑠々は久遠の方を見つめた。
「久遠さん、ちゃんと飽きずにゲームやるので、パソコンとか設定とか色々見てくれますか?」
いきなり話しを振られた久遠が少し驚いた表情を見せた。
「俺が?」
「はい! 私を振ったお詫びとしてどうでしょうか?」
堂々とした態度と笑顔で眞津藻瑠々が答えた。その様子を見て冬凪は大きな勘違いをしていたことに気付いた。
眞津藻瑠々が告白をして振られた時は、それで諦めて終わりだと思っていたがそうではなかった。むしろここが彼女にとってスタートだったわけだ。
それ程までに來夢への思いが強いのかと感心してしまう。
「まあ……時間が合えばな」
「約束ですよ? あとで冬凪ちゃんから連絡先教えてもらってもいいですか?」
「別に、好きにしろ」
そう言うと久遠はグラスに残っていたビールを飲み干した。
「これで許可も貰ったし! 悪いけどあとで久遠さんの連絡先送っておいてもらえる?」
「うん! わかった!」
冬凪は元気いっぱいに答えた。あの事件によって、結果的に眞津藻瑠々は久遠との距離を確実に縮め、連絡先も知ることができて計算通りと言えるのではないか。女優として活躍する人はやはり普通とは違うなと思った。
同時に先程久遠が告白を断る時に少しの間、何を考えていたのかが気になる。今回の彼女からの提案に応えるということはそこまで嫌いというわけではないのか。いつか聞けそうな時があれば聞いてみようと思う。
その後は久遠も、多少会話に加わったりもし、最終的には楽しいと思える食事会も無事に終わりを告げようとしていた。
始まる前には場違い感しか感じていなかった冬凪も、いざ始まり楽しく話していると、他の三人が人気芸能人だということも忘れてしまう時がある。
芸能人だから一般人の自分とは住む世界が違うとか、良かれと思ってそういう線引きを持ち続けていたが、実はそれは間違えなのではないだろうかという思いが冬凪の中で芽生えだした。
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