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第6話 煌めく文化祭(前編)
眞津藻瑠々が企画した食事会から数日が経過した。冬凪はあの慌ただしさが嘘だったかのように落ち着いた日々を過ごしていた。
元々忙しい三人だ。というか人気はまったく衰えることはなく、さらに忙しくなってきている三人と言った方がいいかもしれない。
スキャンダル捏造の眞津藻瑠々も、なぜか前以上にテレビで見るようになっている。皆に好かれるということ自体が彼女の天性の才能なのだろうと、身近で接しているうちに、冬凪はそう思うようになった。
ふと、机の上の卓上カレンダーが目に入る。ちょっとした予定もそのカレンダーには記載してあるのだが、あまり気の乗らない学校行事が一つ近付いてき
ていることに気が付いた。
文化祭だ。
高校行事で青春の代名詞的イベントだが、冬凪はあまり好きではなかった。文化祭当日は楽しいが、そこに至るまでに、クラスの出し物の準備で遅くまで残ったり、皆と協力して何かやるというのが得意ではない。
忙しくてゲームやる時間減っちゃうなぁ、などと思いながら部屋の電気を消すとベッドへと潜り込んだ。
次の日の学校で早速文化祭の話し合いの時間が設けられることとなった。クラスの活発な中心人物が次々と意見を挙げていく。
あまり大変なやつじゃないといいなぁと思いながら進んで行く話し合いを見守っていると、そんな冬凪の思いは届かなかった。
「ではうちのクラスでの出し物はお化け屋敷で決まりました! 異議のある方は挙手願います!」
学級委員長の真島秀介がやたら元気に発言した。無事に決まったことで安心したのだろうか。
異議あり! と言いたいところだが、この場でいきなりそんなことは言えるわけがない。よりにもよって、一番めちゃくちゃ遅くまで残って尚且つ当日も大変なやつだと、冬凪は肩を落とすしかなかった。
「お化け屋敷をやるクラスを何度か見たことあるが、正直めちゃくちゃ大変だからな。部活動の出し物もあって忙しくなると思うが、同じ仲間やクラスの人にはきちんと説明してトラブルのないようにな」
担任の先生が全員に向けて注意を促した。冬凪の学校は全員何かしらの部活動に所属しなければならなかった。
ということで冬凪も一応部活動に所属はしていたわけだが、ほとんど行っていない。1年生の時は、部活動を決めた初日、文化祭、3年生を送る会の時。2年生の時は文化祭と3年生を送る会の時のみ。3年生になってからはまだ行っていないので、まだ5回しか顔を出してないことになる。
完全な幽霊部員なのでそこは今年も変わらず、例年通り一応少しだけ顔を出す程度で大丈夫だろうと思う。
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